過労の公務員、自殺前にSOS 「ヤミ残業」黙認問う両親の闘い

親思いで責任感が強かった最愛の息子は、公務員としてひたむきに働いていた。「結婚して、孫もできて……。そんな未来がやってくると思ったのに、全て奪われてしまいました」。月100時間を超える過重労働の末に命を絶った息子の両親が、勤務先の奈良県を相手に起こした民事裁判で真相究明を求めている。訴訟を通じて浮かんできたのは、「ヤミ残業」の黙認が疑われる勤務管理の実態だった。

【出勤簿の写し】実際の「時間外」は100時間超だった

 5年前の2017年5月21日朝、奈良県職員だった西田幹(つよし)さん(当時35歳)は奈良県大和郡山市の自宅で亡くなっていた。鳴りやまない目覚まし時計のアラーム音に異変を感じ、ベッド脇でぐったりする幹さんを見つけたのは同居の父裕一(ひろかず)さん(68)だった。

 3人兄妹の長男だった幹さん。裕一さんと母隆子さん(65)は名前に「一家の大黒柱になってほしい」との願いを込めた。幹さんは時間があれば実家の畑仕事をこなし、田植えも手伝った。県職員を志したのは、「家から通える職場にしてほしい」という両親の希望を尊重したからだ。両親にとって、自慢の息子だった。幹さんは音楽鑑賞が大好きで、部屋の片隅に残されたオーディオデッキやCDは今も整理できない。

 ◇ある情報提供で急転

 「何があったのか。誰か教えてほしい」。息子の死を受け止められないまま1カ月ほどが過ぎた頃だった。弁護士が相談を受け付ける「過労死110番」のニュースをテレビで目にした時、ピンとくるものがあった。深夜帰宅や休日出勤が続く中、幹さんが最近は職場の話をほとんどしなくなっていたからだ。

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