「こんな不作経験ない」ノリ値上げの背景に温暖化

有明海が一大産地として知られるノリが近年、値上がり傾向にある。ノリは低水温を生育条件とし、温暖化で養殖期間が短くなった分、生産枚数が減少しているからだ。今季は不作の産地が相次いで全国で最低水準となり、15年前の7割程度にとどまる。テレワークの普及で、コンビニのおにぎりの需要が減ったため、市場価格は抑えられてはいるが、新型コロナウイルスの感染状況による影響や関連経費の高騰でさらなる値上げに踏み切る可能性もある。

 ロングセラーで知られる永谷園の「お茶づけ海苔」。6月から値上がりし、希望小売価格は8袋入りで12円高い250円になる。お茶漬けのもとの値上がりは7年ぶり。ノリなど原料が高騰しているためという。

 日本一のノリの生産量を誇る佐賀県。約25年間ノリ養殖を続けている同県太良町の大鋸(おおが)武浩さん(52)は「今季は過去最低。これほどの不作は経験したことがない」とこぼす。ノリ網を張り込んだ有明海西部では昨年秋に赤潮が発生。ノリの生育に必要な栄養分を含む雨も降らず、今季の売り上げは50万円で、昨季の1100万円から激減した。

 雨は全国で不足し、瀬戸内海や伊勢湾も不作。今季の全国の生産枚数(1枚縦21センチ、横19センチ)は、63億7204万枚(前年比8324万枚減)にとどまった。
 そもそもノリの年間生産量は減少傾向が続いている。秋から春にかけて養殖されるノリは、種付けが海水温23度以下、生育が16~10度が一般的に適温とされており、温暖化で養殖期間が短くなっているからだ。実際に有明海では種付けを従来よりも2週間程度遅らせている。

 全国漁連のり事業推進協議会によると、2006年度の全国の生産枚数は95億6779万枚。11年度以降はおおむね80億枚を割り、18年度からは60億枚台となっている。

 生産枚数が減少すれば、価格は高騰するのが原則。業者が入札で仕入れる1枚当たりの平均単価は06年度8・65円だったが、14年度以降は10円を上回るようになり、18、19年度には13円台となった。
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