脆弱X症候群」という治療法が確立されていない遺伝子疾患を患う男がFacebookを通して精子提供を行い、これまでに15人の子供が誕生した。男は病気については知らせずに同性愛者の女性に精子を提供しており、このほど男の裁判が行われて注目された。『The Mirror』などが伝えている。

英ダービーシャー州ダービーの家庭裁判所で先月30日、遺伝性疾患「脆弱X症候群」の患者であることを告知せず、Facebookで精子を提供していたジェームズ・マクドゥーガル(James MacDougall、37)の裁判が行われた。

脆弱X症候群とはX染色体の異常の1つで、知的障害や発達遅滞が特徴で男性に多く、女性の方が障害の程度が低い。治療法は確立されておらず、男性患者は大きな耳や細長い顔など身体的な特徴が見られ、てんかん、斜視、関節の過伸展、中耳炎、胃食道逆流症による摂食障害などを合併したり、思春期以降にうつ病などを発症することもある。

ジェームズは自閉症スペクトラム障害や学習障害を抱えており、子供の頃に虐待されて養子に出された。養父母はジェームズが精子の提供を行ったことを全く知らず、「子供ができた」と写真を見せられた時はショックを受けたという。

さらにジェームズは「誕生した子供とは一切連絡を取らない」との書類に署名をしながらも、誕生した3歳から生後数か月の4人の子供の親権や面会を求めており、母親3人がジェームズの申し出に異議を唱えていた。ジェームズから精子を提供されて誕生した4人の子供のうちの1人は3歳になっても言葉を話さず行動障害があり、そのうえ親権まで要求された母親の怒りは収まらない。

裁判では、ジェームズが3歳と2歳の子供の家に住み込んで母親に暴行を加えたことや、2018年に誕生した子供に面会した際に子供を虐待した疑いがあることなども明らかになり、リーベン裁判官はジェームズが4人の子供と面会することを禁止した。

リーベン裁判官は、ジェームズが子供に危害を加えたり母親にトラウマを与える可能性があること、物事を的確に判断する能力に欠けることなどを理由に挙げ、「脆弱X症候群の患者であるジェームズは、クリニックを通して精子の提供ができないことを知ったうえで個人でドナーになった」と指摘、ジェームズの訴えを退けた。

なおジェームズの弁護士は「顧客の名前は公表しないで欲しい」と要求していたが、リーベン裁判官は「ジェームズの精子がこれ以上使われることがないように」と名前を公開するよう命じた。

今回の判決に、ジェームズは「自分は子供ができない女性を助けただけで何も悪いことはしていない。このようなことになり非常に落胆し、怒りを感じる」と主張、養母も「ジェームズは子供ができない女性の夢を叶えただけで、お金ももらっていない。彼は自分の子供の人生に関わりたかっただけなのに、それを禁止されて苦しんでいる。被害者はジェームズだ」と述べ、落胆する息子を擁護した。https://article.yahoo.co.jp/detail/feb68e4c656b960f52be1540da6b119c3b0d188e