「君はアベノミクスを批判するのか」安倍氏怒りの電話で何が起きたか

 歴代最長を記録した安倍晋三政権の遺産にどう向き合うか。時代の要請ともいえる議論で、自民党内の路線対立が表面化した。経済政策「アベノミクス」をめぐり大立ち回りを演じたのは、ほかならぬ安倍氏である。

 5月19日、自民の財政再建派を中心とする財政健全化推進本部の会合後、安倍氏(67)は、自らの派閥に属する越智隆雄・元内閣府副大臣(58)の電話を鳴らした。「君はアベノミクスを批判するのか?」。声は怒気をはらんでいた。

 推進本部で事務局長を務める越智氏は「批判はしていません」と理解を求めたが、安倍氏は「周りはアベノミクスの批判だと言っているぞ」と迫った。「僕はアベノミクス信奉者です。だって、(経済政策を担う)内閣府の副大臣を2回もやったじゃないですか」。越智氏がそう訴えると、安倍氏は「そうだな」と電話を切った。

だが、話を終えても安倍氏は憤懣(ふんまん)やるかたない様子で、周囲に「誰があんなバカな提言を書いたんだ」と言い捨てた。怒りの矛先は、その日の本部の会合で示された提言案だった。