『僕の狂ったフェミ彼女』あらすじ
就活を前に不安な僕を癒してくれた、愛らしい僕の彼女。毎日のようにベッタリで、付き合って1周年を迎えた。
そんなとき僕は、1年間の海外インターンシップに行くことに。遠距離は不安だけど、彼女なら安心だ、待っていてくれるはず――。
しかし、出国当日。空港にいたのは、涙ぐむ彼女を抱きしめる僕ではなく、別れのメールをもらってメンタルが崩壊した僕だった。
そんな初恋を引きずりながら 大企業に就職し3年目を迎えた「僕」ことスンジュン。
周囲はほとんど結婚して、「まだ独身なの?」とからかわれることも多い。結婚する女性を選ぶだけなのに、なかなか結婚への意欲がわかない。
そんなある日、初恋の彼女と出くわした! 心がまた動き出す……ところが、彼女はこともあろうにフェミニストになっていた!


>江南駅前のビルの男女共用トイレで二十代の女性が殺害されたこの事件が、女性を無差別に狙ったフェミサイド(女性嫌悪殺人)だとわかると、
>多くの女性が「被害者は自分だったかもしれない」と感じて声を上げ始めたのです。 

――江南の事件をめぐる、報道や司法の姿勢に対し、違和感を抱いたそうですね。

ミン ニュースを見た瞬間、私を含め大勢の女性たちは「ミソジニー犯罪」だと分かりました。男女共用のトイレで、犯人は女性が入るのを待って殺したこと、
女性に対し被害者意識を持っていたことが明らかになりました。女性にとってはまだ危ない面も多い韓国社会で、また女性が被害者になった。
いつも、知らない男性犯罪者の暴力に怯えながら生活している女性たちには、他人のことだとは思えない。とても悲しい事件でした。
私がそのトイレに入ったら、殺されたのは自分だったことを知っているので。

――事件以来、女性による発言が高まる一方で、更にアンチも生まれていきました。

ミン 韓国の悪名高い匿名掲示板「イルベ(日刊ベスト貯蔵所 ※)」民が、その場に来て妨害をしていました。
そこに集まっている女性たちに悪口を言ったり、物理的衝突もあったりしたんです。
すごく怖いし、ムカつくし、こういうことが起こると、言い返したくなる。闘いたくなる。そんな感情になっていったと思います。

ところが、男性の多くは女性の恐怖を理解できず、警察も「ミソジニー」や「ジェンダー」とは関係ない、ただの精神疾患者の「通り魔事件」だと処理しました。
まわりの男友達たちも、この件だけは理解するのが難しかったようです。私は最初、努力して説明してみたのですが、それは辛いことでしたし、
だんだん諦めてしまうようになりました。大勢の女性たちも当時、私と同じ経験をしていたはずです。この事件が、今の葛藤の始まりだったと思いますし、
大勢の女性が覚醒するきっかけになったと思います。私もそうでした。それ以来、この問題に関して話が通じない人とは、恋人にも友達にもなれないようになってしまいました。

――事件が、敢えて言うなら「矮小化」されて広まる社会に危惧を抱いた。

ミン そうですね。「国から無視される」感じです。大勢の女性たちが怒りを感じ、韓国社会の性差別とか、そういう問題に反発し始めるきっかけになったと思います。
事件までは普通に趣味の話を楽しくしていて、話の合った友達が「考え過ぎだ」「被害妄想だよ」「なんで女性たちはそんなに大げさなの?」。
そんな反応ばかりだったので、それが衝撃でした。

事件後に江南駅の周りでは、(被害者を悼む言葉を記した)ポストイットを貼る姿がよく見られました。私も2、3回ぐらい行ったんですけど、私ひとりじゃなかった。
恐怖感、絶望感が私ひとりのものではなかった。連帯できる人たちがいることをその場で感じました。

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――ところで、この物語は、一人称視点で進んでいきます。フェミニストの彼女ではなく、主人公の男性スンジュンの視点で綴られますね。

ミン 男性から、立場の異なるフェミニストの彼女を批判させることで、逆説的に、主人公の男性の歪みを描く手法をとりました。

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https://book.asahi.com/article/14634146
https://p.potaufeu.asahi.com/83da-p/picture/26869213/e45c1adb0bb79667f2cfb0ff7998c124.jpg