公立中学校で行われている休日の部活動を民間のスポーツ団体などに委ねる「地域移行」を、
来年度からの3年間で段階的に進める目標を掲げたスポーツ庁の有識者会議の提言が大筋で了承された。
学校現場からは歓迎の声が上がるが、信頼できる指導者の選定や保護者の費用負担増など実現に向けた課題は多い。
部活動は学校教育の一環としても重要な役割を担っているため、専門家は安易な外部委託に陥らないように慎重に改革を進める必要性を強調している。
公立中の運動部活動は教員の長時間勤務の一因となっており、競技経験のない教員が休日を返上して指導に当たるケースも目立つ。
日本スポーツ協会が昨年実施した調査によると、指導に当たる中学教員の73・7%が「地域と連携したことがない」と回答。
一方で、45・6%は休日の部活動を「地域人材に任せたい」としており、特に女性教員では半数超の59・3%が移行に肯定的だった。
「提言案のように外部から一石を投じてもらわないと、現場は変わらないので期待が高まる」。東京都内の公立中に勤務する女性教員(47)は国の動きを歓迎した上で、
「信頼して生徒を託すことができる外部の指導者が見つけられるのか。現場レベルで運用するのは、容易ではない気がする」と不安も口にした。
確かに、実現には課題が山積している。受け皿となるスポーツ団体などは自治体によって数が異なる。そうした地域格差をどう回避するのか。
教員のボランティアによってコストが抑えられているが、移行後は新たな施設使用料や指導者への謝礼、追加の保険加入などによって保護者の負担が増す可能性も想定される。
スポーツ庁が昨年度に行った移行に関する研究事業に参加した自治体のアンケートでは、生徒と保護者に「月謝を支払うことになっても参加するか」と尋ねたところ、
ともに約半数は参加を迷う状況が判明。生徒の約3割、保護者の約1割は「参加したくない(させたくない)」と回答した。
提言案では、貧困世帯に対する自治体や国の支援の必要性にも言及しているが、びわこ成蹊スポーツ大の黒澤寛己教授(スポーツ政策学)は
「十分な財源が確保されないまま、なし崩し的に移行すれば、学校現場や保護者に混乱を与えかねない」と警鐘を鳴らす。
部活動は生徒指導など学校教育の一環としての役割を果たしてきた歴史的な経緯がある。
黒澤教授は「移行後も、試験前に活動を控えるなど教育的な配慮は不可欠。休日と平日の指導者が分かれることになるが、学校側は活動内容についての確認を継続的に行い、
校外の指導者と円滑に意思疎通を行える環境づくりが必要となる」と話した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f0c166e58923e015bb9b6ad156b8dd7bfccdf00a