日本銀行の黒田東彦総裁が「家計の値上げ許容度も高まってきている」とした発言の根拠となっているのは、東京大学大学院の渡辺努教授らによる調査だ。渡辺教授がこの調査から伝えたかったメッセージは何だったのか。黒田氏の発言は適切だったのか。渡辺教授本人に取材すると、意外な答えが返ってきた。



 黒田氏が引用したのは、東京大学大学院の渡辺氏らのチームが5月に発表した「5カ国の家計を対象としたインフレ予想調査」。調査は4月から5月上旬にかけ、日本のほか、米国、英国、カナダ、ドイツの計5カ国の約2万人を対象に実施された。
https://www.asahi.com/sp/articles/ASQ677FB8Q67ULFA033.html
 黒田氏は6日の講演で、「なじみの店でなじみの商品の値段が10%上がったときにどうするか」という調査項目を紹介。この質問に対し、昨年8月の調査では57%の人が「他店に移る」と回答したが、今年の調査では44%まで減少したことなどから、「家計の値上げ許容度も高まってきている」との認識を示した。

 ただ、黒田氏が紹介した調査結果はごく一部にとどまる。この質問で6割超の人が選んだ最多の回答は「その商品をその店で買い続ける。ただし、買う量を減らしたり、買う頻度を落としたりして節約する」だった。つまり、同じ店で買うものの、なんとか節約でしのぐという姿が回答に含まれているのだ。