客観的に見れば、いま日本はかなりのピンチだ。日経平均株価は依然、2万7000円台をうろつきパッとしない。円安は解消せず、1ドル=135円を窺う展開が続く。電気代・燃料費や物価の上昇は、庶民の暮らしを目に見えて圧迫し始めた。

 にもかかわらず、岸田一人だけが奇妙な「我が世の春」を謳歌している。

 「そもそも野党が反対するような法案がないから、国会で議論が起こらない。岸田さんは何を言われても『検討します』と言って引っ込むだけだから、揚げ足を取られず支持率も下がらない。ただ時間が流れてゆくだけ。その間にも、日本の国力はジリジリ下がっていく」(自民党中堅幹部)

 かつて岸田をぞんざいに扱った「先輩」たち、すなわち安倍晋三や菅義偉は、アベノミクスにせよコロナ対策にせよ、評価はさておき、掲げた政策を実行に移した。行動には必ず批判が伴う。両者は国民にもマスコミにも叩かれ、見放された。

 そうして権力の座を下りた宰相たちを見て、岸田はある教訓を得た。

 〈何かするから、負けるのだ。『何もしない』、それこそが最強への道だ〉

 実績と不釣り合いな岸田の支持率を見れば、どうやらそれは、正解と言って差し支えなさそうだ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/669475aa07796d00619b5447cdc1741082fcb8c0?page=2