強硬左派や共産党が閣外協力するコスタ政権は、誕生当初はまだ欧州債務危機の爪痕が残り、財政拡張に舵を切ると不安視されたが、その後も健全な財政運営を続け、コロナ危機が起きる以前の2019年には初めて財政黒字に転換していた。欧州債務危機の克服、危機克服に向けて取り組んだ構造改革の成果、政治安定、堅実な財政運営が評価され、同国の国債利回りは低下基調を辿り、イタリアやスペインを下回った。
しかしポルトガルはコロナ危機後の復興資金をEU加盟国に提供する欧州復興基金からGDP比で30%近い資金を受け取る予定で、他の南欧諸国や中東欧諸国と共にに最大の受領国の1つだ。既に4月に全体の23%に相当する初回資金を受け取っているが、追加の資金拠出は復興計画に盛り込まれた目標達成が条件となる。今回の政変で予算成立と復興基金の追加拠出が遅れることになろう。その場合も直ちにポルトガルの財政を取り巻く環境悪化が不安視される訳ではない。ただ、最近の世論調査では近く総選挙が行われる場合も、政権を率いる社会党やかつての政権与党で中道右派の社会民主党(PSD)が、単独で議会の過半数を獲得することは難しい(図表2)。総選挙後の安定政権の樹立が困難な場合や政治空白が長期化する場合、ポルトガル関連資産に対する評価を再び見直す必要が出てこよう。