MGMと結んだ「基本協定書」では、大阪進出の条件として、
▼新型コロナ感染症を収束させ、観光需要の回復に見通しがたつこと
▼MGM・オリックスに深刻な財務状況の悪化が生じていないこと
▼IR税制(所得税を課さないなど)の早期法制化
などとともに、「夢洲特有の課題」として、
▼土壌汚染・液状化等への適切な対応を含め、IR事業用地の適性が確保できることを挙げている。

さらに「基本協定の解除権」――業者側が契約をキャンセルできる名目として、「誠実かつ合理的な裁量により条件の成就・不成就を判断する」と業者側の優位的立場を確認したうえで、主な条件として「土地・土壌に関する大阪市における適切な措置の実施」を定めている。つまり、大阪市が業者が望むような適切な措置をとらなければ、業者はいつでも違約金ゼロで撤退できるというものだ。

地方財政学専門の森裕之教授(立命館大学)は、「夢洲はゴミ捨て場であり、ゴミそのものといってもいい埋め立て地だ。契約上、後からIR事業者が“これでは足りないので進出しない”といえば市は断れない関係だ。もし万が一失敗したら歴史上かつてない財政負担が大阪市にのしかかることになり、せっかくのカジノ構想が大阪市の息の根を止める事業になりかねない」と指摘している。
「民設民営」どころか、大阪市が借地料を大幅に上回る工費を負担してインフラ整備や土壌改良をし、業者はその開発費用を自分の関連企業に丸投げしたあげく、言い値で公費をつり上げることもできるし、最終的に「日本に用無し」と判断したら撤退することも可能という、異例なまでに外資に隷従したリスクのありすぎる契約内容となっている。