思わず、読みながら声をあげてしまったーー凄味と情感があふれる 医療小説の新たな金字塔誕生(レビュー)
https://news.yahoo.co.jp/articles/4b08451d92e936de6a578b058121c43fe4e0b961
思わず、読みながら声をあげてしまった。あまりに残酷で悲惨な状況に参ってしまったからだ。読むのが辛い。でも、読みたいし、日本人なら読まなくてはいけないと思った。帚木蓬生の新作『花散る里の病棟』所収「胎を堕ろす 二〇〇七年」である。 この読書体験、帚木蓬生の戦争・医療小説の白眉『蛍の航跡 軍医たちの黙示録』と似ていると思った。姉妹編『蠅の帝国 軍医たちの黙示録』は内地と満州を主な舞台にして東京大空襲、原爆などが報告されたが、『蛍の航跡』ではシベリアからラバウルやニューギニアなどを舞台に、生き地獄の体験者である軍医たちが様々な極限状況を物語っていた。もう嗚咽をこらえながら読むしかないほど悲惨でやるせなかった。