https://news.yahoo.co.jp/byline/ymjrky/20220616-00301194

ラーメンが「1,000円の壁」を超えられない2つの理由とは?

ラーメンの適正価格はいくらなのか
 ラーメン業界には古くから「1,000円の壁」というものが存在する。ラーメン一杯の価格が1,000円を超えられないという意味だ。2000年前後のラーメンブーム以降、ラーメンの売価は年々上昇傾向にあるが、現在のボリュームゾーンは体感的に都内で概ね700円台後半から800円台といったところだろうか。

 その一方で、今でも「ラーメンはワンコイン」「ラーメンは安いB級グルメ」と捉えている人が、年配の方を中心に少なからずいる。ラーメンをワンコイン数百円で食べていた人からすれば、一杯1,000円のラーメンなんてあり得ないだろう。

 しかしながら、ラーメンはこの数十年で驚くほどに進化を遂げ、使う食材も良いものを使うようになり、手間暇もかけるようになってきた。かつてのラーメンとは別の食べ物と言っても良いくらいだ。しかしながら、その進化や変化に多くの消費者の意識が追いついていないのが現状だ。

 5月16日、神奈川の人気ラーメン店『らぁ麺 飯田商店』がTwitter上でラーメンやつけ麺の価格改定を発表した。新価格は「しょうゆらぁ麺」が1,600円、「つけ麺」が2,000円。この価格をどう捉えるかは人それぞれだが、私は適正価格であろうと考えている。

 しかしながら、SNSなどでは当然のごとく賛否両論が渦巻いており、ラーメン業界にあらためて「ラーメンの適正価格」について考える一石を投じたアクションと言えるだろう。「たかがラーメン」と考える人と「されどラーメン」と考える人の分断である。

現代のラーメンは原価がかかっている
現代のラーメンは戦後間もない頃のラーメンとはまったく異なる麺料理であり、ラーメン店そのものも進化している。厳選された高品質な食材を惜しげもなく使い、接客やサービスを充実させ、器も特注のものを使い、店内も綺麗で清潔感がある。まるでレストランに匹敵するようなクオリティの商品やサービスを提供している店が少なくない。

 ラーメンに対してその価値を感じられる人にとっては、ラーメンが一杯1,000円以上であっても抵抗感はない。しかしながら、ラーメンは安くて旨い庶民の食べ物、というイメージしかない人からすれば、800円ですら高く感じる。そして客観的に見て大別するならば、やはりいまだラーメンは安くて旨い食べ物という消費者マインドの方が勝っているのではないだろうか。

 さらにその考え方は客側だけではなく、ラーメンを提供する店側にも根強く存在している。私が知るラーメン店主の多くは「美味しいもの、良いものを出来るだけ安く提供したい」と考えている。つまり、原価をかけて良い食材を使いながらも、売価を安く設定している。自分の利益よりも客の満足度を優先させている人が少なくないのだ。

 あるいは、本来ならばもっと高い売価をつけたいものの、「ラーメンは安いもの」という消費者ニーズや、立地における他の飲食店の相場価格などを勘案して、つけたい価格をつけられないという店も少なからずある。いずれにせよ結果として「高原価率、低利益率」という商売をしているラーメン店が多く存在している現状がある。

ラーメン店は正しい利益を得るべきだ
ラーメン店はラーメンの売り上げで商売が成り立っている。ラーメンの売り上げから材料費のみならず、家賃や人件費、水道光熱費、消耗品費など様々な経費を出さなければならない。その上で残ったものが利益となるが、2割も残れば優秀だ。売価が高くないラーメン店は構造上「薄利多売」のビジネスモデルが主流となっている。