インフレに良く耐えているスイス、利上げ決定でスイスフラン急騰
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健全なスイス経済と金融緩和

これはコロナ後どころか、リーマン・ショック後初の利上げとなる。

あまりスイスに詳しくない読者もいると思うので、まずはスイスという国の状況について書いておこう。

贅沢な悩みなのだが、スイスは常に通貨高に悩んできた国である。地理的にはヨーロッパの中心部にあり、経済的には周りをユーロ圏に囲まれている。

具体的にはドイツやフランスなどなのだが、両国の物価はイタリアやギリシャなど経済の弱い国も参加するユーロ圏に加盟して以来、著しく低くなった。

これは小国スイスの観光業や輸出産業にとって悩みの種である。スイスフランが高ければ、隣国の人々にとってスイスで売られているものは高く感じる。だからスイス国立銀行は常にユーロを意識し、ユーロに対してスイスフランが高くなりすぎないように細心の注意を払ってきた。

だが経済規模が全然違うギリシャとドイツを一緒くたにするというユーロの欠陥からユーロ圏経済は沈んでゆき、ユーロ圏経済はマイナス金利と量的緩和に頼るようになった。

一方、スイス自体は小国だが世界有数の豊かな国であり、財政赤字もないどころか財政黒字を積み上げ、コロナ後は流石に赤字を出しているが、来年には黒字に戻る予定となっている。

だからスイスに金融緩和は必要なかったのだが、緩和をしなければ財政が健全なスイスの通貨はどんどん上がってゆき、ボロボロのユーロ圏との差が開いてしまう。

結果として、スイス国立銀行は世界有数の強力な緩和を行う中央銀行として知られるようになった。そこまでしなければユーロと同じくらい通貨を弱くすることができなかった。

時にはどうしてもスイスフランが強すぎ、為替介入に失敗してスイスフランが暴騰する逆ショックを引き起こしてニュースになった。

コロナで現金給付などの無茶苦茶な政策が当たり前になり、世界的なインフレが進むなか、レイ・ダリオ氏などは財政が健全な国に賭けるよう推奨している。