東京のような都市部の新聞配達現場は人手不足が深刻で、留学生アルバイトなしでは成り立たない状況になっている。1990年代からベトナム人を「新聞奨学生」として受け入れている朝日新聞の販売所の場合、とりわけそうだ。ベトナム人をはじめとする外国人が配達する朝日の割合は、都内で4割程度に上るとみられる。

 朝日は紙面で時折、ベトナム人奨学生の“美談記事”を報じる。しかし実際には多くの販売所でベトナム人たちの「週28時間」を超える違法就労が横行し、超過分の残業代も支払われていない。

 もちろん、違法就労や残業代の未払いは販売所の責任ではある。だが、問題は単に販売所のことだけにとどまらない。

「日本人奨学生と同じ仕事をしているのに、なぜ自分たちは待遇で差別されるのか」

 2014年にベトナム人奨学生たちの取材を始めて以降、私は彼らから繰り返しそう聞かされてきた。外国人奨学生を採用し、販売所へ斡旋している「朝日奨学会」の制度に対し、ベトナム人たちは強い不満を抱いているのだ。

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/307015