警察の気配が消えた? 6年ぶりの新疆ウイグル自治区、記者の違和感
https://www.asahi.com/sp/articles/ASQ6N5WNPQ6NUHBI00V.html

5月28日。私は前日の夜から、6年ぶりに中国・新疆ウイグル自治区の区都ウルムチに足を踏み入れていた。
中央アジアの国々と国境を接し、イスラム教を信仰する少数民族のウイグル族が多く暮らす場所だ。
ウルムチは北京から西に約2400キロ。北京からは東京よりも距離的には遠い。

 大型の商業施設が並ぶ一画では、多数派の漢族もウイグル族も土曜日の散策を楽しんでいるようだった。
一見しただけでは、中国のほかの大都市と変わらない。
だが、ウイグル族に対しては中国当局による人権侵害が国際人権団体などによって非難されてきた。
米政府などからは「ウイグル族や他の少数民族ら100万人以上が拘束されてきた」といった指摘が出ているが、
中国政府は「でっち上げ」として取り合っていない。

習氏をたたえ始めたウイグル族の30歳

 公園のベンチに座っていたポロシャツ姿の男性に話しかけてみた。
30歳のウイグル族だというその男性に人権侵害について尋ねると声のトーンを上げ、習近平(シーチンピン)国家主席をたたえ始めた。
「国外からの指摘には同意できない。新疆の民族は大団結し、習主席の指導のもと、人民は幸せに暮らしている」

さらに、外国の指摘がいかに不当かをまくし立てた。
ウイグル族から当局の公式見解と同じ内容を一方的に主張されるのは、これまでの長い取材経験で初めてのことだった。
男性の言葉が本音でないとは言い切れない。だが私は強い違和感を覚えた。