第2次世界大戦後、人口や工業・農業活動の急激な増加により、人間が地球に及ぼす影響は急激に増大しており、この現象は「グレート・アクセラレーション(大加速)」と呼ばれている。

 地球のシステムの変化は非常に大きく、すでに新しい地質年代に入ったと主張する研究者もいる。258万年前に始まった氷期と間氷期が繰り返された更新世と、約1万2000年からの温暖で安定した完新世を経て、私たち人類は「人新世」を作り出したのだという。
 
 (中略)
 
 ドイツ沿岸から数百キロ離れたバルト海の海底から、長さ約45センチ、期間にして150年分のしま模様の堆積物コアを採取した。

 カイザー氏はコアの下から半分強のところを指差しながら、1956年頃から大きな変化が始まっていると指摘した。薄い泥の層の中に、はるか彼方の太平洋で行われた核実験由来のプルトニウムやアメリシウム、有毒な殺虫剤であるDDT、第2次世界大戦後に急増した石炭火力発電所から出たすすの粒子など、世界中で起きた変化を示す目に見えない痕跡が含まれるようになったのだ。

 目に見える変化もあった。灰色だった堆積物の色が突然、暗褐色に変化しているのだ。戦後、ヨーロッパの農家が大量の化学肥料を使うようになり、その栄養分が河川からバルト海に流れ込んだ結果、藻類や海洋植物が増加したからだ。カイザー氏は「『人新世はここから始まった』と示すことができます」とアピールした。

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