ワシントン条約で国際取引が禁じられている象牙を巡り、東京都の有識者会議が条例制定などによる取引規制を求める報告書をまとめた。

 アフリカゾウ絶滅の懸念から象牙やその加工品が大量に流通する日本への風当たりは厳しい。都だけでなく、政府も国際社会の流れに背を向けず、象牙取引禁止へ一歩踏み出すべきだ。

 象牙は1990年以降、輸出入が原則禁止された。さらに条約締約国会議は2016年、密猟や違法取引を助長する象牙の国内市場の閉鎖を勧告した。

 最大の象牙消費国だった中国のほか、香港やシンガポールなども市場閉鎖へかじを切った。ただ日本は完全形の象牙の登録などを条件に象牙売買を維持する方針を変えていない。

 報告書は、的確な規制や透明化など象牙取引の適正化に向け条例制定などを求めている。

 具体策として、取引経緯を把握できるトレーサビリティー(流通履歴)の向上▽違法な国外持ち出し・持ち込みを取り締まる水際対策の徹底▽日本の象牙文化・芸術を守る視点から「狭い例外」の認証―などを列挙した。政府対応の遅れを一層浮き彫りにしたとも言える。

 都は五輪開催を機に、有識者会議を設置した。訪日外国人が増え、土産物として象牙製品を違法に持ち出す恐れがあり、対策を講じるのが狙いだった。

 和楽器や印鑑などに象牙を使う日本では、現在も数多く取引されている。政府は条約の規制前に合法的に輸入された象牙であり、「厳格に管理され、密猟とは無関係」と主張するが、国際社会は納得していまい。

https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/801574