大阪医療刑務所(堺市)が、業務委託先の会社を通さずに業務上の指示を直接出し続けたのは違法だとして、収容者の移送車両などを運転していた元運転手の男性(65)が労働者派遣法に基づく直接雇用と、約1千万円の損害賠償を国に求めた訴訟の判決が30日、大阪地裁であった。中山誠一裁判長(横田昌紀裁判長代読)は「偽装請負」に当たるとしたが、直接雇用の義務はないと判断し、賠償請求を退けた。原告側は控訴する方針。

平成27年施行の改正労働者派遣法は、公的機関で偽装請負が存在した場合、求めに応じ「採用その他の適切な措置」を講じなければならないと規定。公的機関に義務づけられた「適切な措置」の解釈をめぐる初の司法判断だった。

中山裁判長は、偽装請負の存在を認め、「国の機関の状況として遺憾」としたが、男性との契約時点で、刑務所側に「法規制の適用を免れる目的があったとはいえない」と指摘。賠償責任が生じるような違法性はなかったと判断した。

また、労働者派遣法が規定する「適切な措置」は、直接雇用に限ったものではなく、他の機関の職員募集の情報を提供することなども含まれるとして、国に「採用すべき義務はない」と結論づけた。

判決を受け、大阪市内で会見した男性は「理解しがたい判決で、(国に味方する)力が働いたとしか思えない」と憤った。代理人の村田浩治弁護士は、民間企業についての同様の規定をめぐる訴訟で、直接雇用を認めた大阪高裁判決が最高裁で確定したことに触れ、「大阪地裁は労働者保護の立法趣旨を理解せずに、規定を無意味なものとした」と判決を非難した。

判決などによると、男性は24年から運転手として大阪医療刑務所で勤務。大阪労働局が28年11月、偽装請負に当たるとして刑務所に是正を指導した。その後、男性の偽装請負の状態は解消されたが、28年度末に雇い止めになり、29年11月に提訴していた。

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