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田村正和さん 俳優
二枚目・喜劇、独特のオーラ
ニヒルな剣客の「眠狂四郎」から軽妙な刑事「古畑任三郎」まで、お茶の間に愛された俳優だった。阪東妻三郎さんの三男で、長兄の高広さん、弟の亮さんも俳優という家庭に生まれた。1961年に木下恵介監督の映画で本格デビューし、80年代に活動の軸足をテレビドラマに移した。正統派の二枚目らしい大人の恋を演じ、一方でコミカルな持ち味も発揮。独特のオーラを放つスターだった。
「僕はずっと二枚目でやってきましたから。喜劇はどこまでやったらいいのか判断が難しい。『二』の線を残しながら毎日頑張っていますよ」。コメディー路線が定着した90年代後半、冗談めかしてこう語っていたが、生来のコメディーセンスを持っていたと見るドラマ制作者は多かった。
主演した代表作の一つで、海外ロケが話題となった「ニューヨーク恋物語」などを執筆した脚本家の鎌田敏夫さんもその一人だ。「コメディーはナルシスト(自己愛の強い人)にはできない。コメディアンでも難しいが、正和さんには普通にお芝居してコメディーができる才能があった」。ドラマの打ち上げなどで見せる姿は「とっつきにくさとは正反対。気さくだった」と鎌田さんは振り返る。
=4月3日没、77歳