千鳥破風(ちどりはふ)の門構えに浴室には富士山のペンキ絵、積み上げられた木おけ――。昔ながらの銭湯の形を守ってきた創業70年の「千代の湯」(東京都中野区)が6月4日、ひっそりとのれんを下ろした。
「東京型銭湯」の特徴が残っている店として、俳優の米倉涼子さん主演のドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」など、数多くの撮影の舞台にもなった。
過去には客があふれるほどにぎわった時もあったが、閉店直前の入浴客は1日あたり50人ほどでピーク時の3分の1まで減った。コロナ禍による客足減に加え、ガスや電気などが値上がりし負担が増した。
例年、気温が上がってくる4月以降はガス代は20万円ほどだったが、今年は最大で2倍近くかかった。
店主の瀬戸広朝さん(79)は「最後はガス代を払うために商売しているようなもんだった。家族でやっていたから何とかもっていた。従業員を雇っていたら赤字だった」と話す。
民間の銭湯が加盟する全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会(全浴連)によると、全国の銭湯は今年4月時点で計1865軒。この2年で約200軒減った。個人経営のところが多く、後継者不足は構造的な問題だ。
設備の改修に費用がかかることも廃業につながっている。足元では燃料や電気の値上がりが経営を圧迫している。
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