警視庁公安部は昨年12月、中国人民解放軍による日本へのサイバー攻撃に関与した疑いで、中国籍の元留学生王建彬(おう・けんひん)容疑者(36)の逮捕状を取った。既に出国しているため公安部は国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配する方針だ。
王容疑者が来日したのは12年前。もともとは、日中貿易のビジネスを夢見る優秀な若者だった。日本国内での足取りを追った結果、民間人を利用した中国の情報活動の一端が浮かび上がった。
中国は2017年施行の国家情報法で、自国民に情報活動への協力を義務化。彼もその末端で使われたとみられている。
(中略)
王容疑者のスマートフォンには、軍人の妻とのこんなやりとりがSNSに残されていた。
「これ以上は危険と感じる。毎回びくびくしている。いけないことだ」(王容疑者)
「国家に貢献しろ」(軍人の妻)
ソフト購入は依頼というより「指示」あるいは「命令」であったことをうかがわせた。捜査関係者は「工作活動の末端で使われた可能性が高い」とみている。
(中略)
公安関係者によると、中国の情報活動は、ロシアや北朝鮮とは異なる点がある。両国では、特殊訓練を受けたスパイが主な活動を担う。
一方、中国は民間人を巻き込んだ「人海戦術」が特徴とされる。特に2017年6月施行の国家情報法は、自国民や中国企業に対し、国家機関の情報活動への協力を義務付けており、こうした傾向はさらに強まっているとみられる。
公安部幹部は「日本が好きで普通に生活している中国人が、ある日突然、中国当局の指示でスパイ行為を働かざるを得なくなるという状況がある」と明かす。
https://news.yahoo.co.jp/articles/215f9b2b5b940d99cb55e953d6a579ff7a3b7bff?page=1