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自然を感じる保養地へ
5月下旬、小樽市東部の山間部の朝里川温泉街を流れる朝里川。「この辺は浅くて流れも遅く、歩いても安全。他で味わえない体験ができる」。同地区で温泉施設「湯の花 朝里殿」を運営するアースキュア(小樽)取締役橋本喜生子(きよこ)さん(37)は期待感を示した。
■川歩き癒やし
橋本さんは9月、子どもたちが川の中をサンダルで歩くイベント「リバーウオーク」を地元若手経済人らと初めて開く。川の流れを感じながら、案内付きで川底の生物を見て自然を体感してもらう狙いだ。橋本さんは「8年前に札幌から故郷に戻り、朝里の良さを再発見した。ここの自然は癒やしになる」と力説する。
この企画と連動し、12事業者でつくる朝里川温泉組合も同時期、川岸でテントサウナの設営などを計画。将来、リバーウオークも引き継ぎ、多世代が楽しめる目玉としたい考えだ。
朝里川温泉街で「癒やし」や「保養」をテーマに体験型メニューに力を入れる動きが広がりつつある。背景にあるのは「このままでは他の温泉街に埋没する」という危機感だ。朝里川温泉の集客数は新型コロナウイルス感染拡大前まで年間15万〜16万人で推移。札幌や小樽市中心部に近く、豊かな自然が残る一方、人気温泉街の定山渓温泉(札幌市南区)も近く、強力な魅力を打ち出せていない。
■「健康」に活路
朝里川温泉街は小さな温泉施設が多く、施設や食事の豪華さで競うのは難しい。同温泉組合は2019年、ドイツの滞在型保養地「クアオルト」をモデルとした「クアオルト型健康保養地」を目指すと宣言。本場では心身の健康につながるような自然や文化などの地域資源を生かした体験メニューを提供し、安定的な集客につなげているという。道内ではクアオルトを掲げる地域がないことも差別化になると判断した。
各事業者も知恵を絞る。小樽朝里クラッセホテルはここ数年、川沿いの遊歩道や周辺の森を散策してストレス緩和を図るメニューを提供。腕時計型端末「アップルウオッチ」を貸し出して心拍数などを測り、ストレス値を可視化するサービスも始めた。温泉組合も昨年度、国の補助金などを受けて観光プラン開発事業に着手。健康食品やサイクリングを目玉とした旅行を企画し、今夏からは客が利用できる電動自転車約20台を各宿泊施設に配置する。
同温泉組合の米山幸宏組合長(54)は「保養を重視したクアオルトの考え方と取り組みを魅力として発信し定着させたい」と語る。構想に賛同し、温泉街の活性化を地域全体に波及させようと住民たちも動き出した。