陰嚢から口笛が聴こえる!? 奇妙な症状が報告される - ナゾロジー
https://nazology.net/archives/111474

参考文献
Man Comes To Hospital With Mysterious Case Of “Whistling Scrotum”, And – Wait, What?
https://www.iflscience.com/man-comes-to-hospital-with-mysterious-case-of-whistling-scrotum-and-wait-what-64284

元論文
[In Press] Whistling Scrotum: An Unusual Presentation of Pneumomediastinum in the Setting of an Open Scrotal Wound
https://amjcaserep.com/abstract/index/idArt/936441

人間の体からはさまざまな音が出るもので、オナラやゲップ、クシャミ、鼻づまりなどは一般的です。

しかしごく稀に、想像もできない部位から変な音が鳴ることがあります。

今回の奇妙な症状は、米国オハイオ州に住む72歳の男性から報告されました。

彼は「陰嚢(いんのう:睾丸を包む袋)」から「口笛のような音」が鳴ると申告したのです。

この奇妙な症状については、2022年6月7日付で学術雑誌『American Journal of Case Reports』に報告されています。

米国の72歳の男性は、精巣に細菌が入って炎症を引き起こしたため、陰嚢を切開して膿を排出する手術を受けました。

しかしながら、しばらくすると再びその男性が来院。

なんと、「陰嚢から口笛のような音がする」と相談してきたのです。

合わせて、「最近息切れしやすく、呼吸しづらい」という症状も訴えていました。

なぜ陰茎から口笛が聴こえてきたのでしょうか?

検査の結果、その原因が明らかになりました。

まず男性は「気胸(ききょう)」のような状態にありました。

これは何らかの原因で肺の空気が肺の外に漏れ出すという症状です。

放っておけば胸壁内にたまった空気が肺を圧迫することで、呼吸困難に陥ることもあります。

ところが今回のケースは、単なる気胸ではありませんでした。

なぜなら男性は、胸壁の内側だけでなく、腹部や会陰(えいん:陰嚢の後方から肛門までの間)、陰嚢にまで空気がたまっていたからです。

簡単に言うと、「男性の胴体は空気でいっぱいだった」のです。

そして、ここから男性の奇妙な症状の原因が明らかとなります。

彼は前回、陰嚢部分の手術を受けていましたが、その「手術でできた陰嚢の開放創」から腹部に溜まった空気が押し出されていたのです。

これが原因で、彼の陰嚢からは口笛のような音が鳴っていました。

まるで、袋に空気を送って演奏する「バグパイプ(bag:袋 – pipe:笛)」のような状態になっていたのです。

では、なぜ体中に空気がたまってしまったのでしょうか?

医師は「どうしてそうなったのか、はっきりとは分からない」と述べており、陰嚢手術以外のきっかけは不明なままです。

とはいえ男性は、空気を排出する手術を受けることで、この悩ましい症状からは解放されています。

「陰嚢の口笛」は男性にとって恥ずかしい経験でしたが、極めて稀な症例として、医学界に報告されることになりました。