安倍氏「国葬」待望論 法整備や国費投入課題 政府「国民葬」模索も

参院選の街頭演説中に銃撃され死亡した安倍晋三元首相の政府主導の葬儀について、自民党内や保守層から「国葬」を求める声が上がっている。ただ、元首相の葬儀に国費を投じることには批判的な意見も根強い。国家に貢献した功労者をどう弔うのか─。政府は今後、検討を進めるが、米国をはじめ諸外国が異例の弔意を示す中、日本自身の対応が問われている。

「現時点で政府として決定していることはない。過去の例や遺族の意向も踏まえて検討したい」

松野博一官房長官は12日の記者会見で、安倍氏の国葬を行う考えがあるかを問われたが、明言を避けた。

過去の例に照らせば、国葬となる可能性は高くない。法的根拠となる国葬令は昭和22年に失効している。同42年に生前の功績を考慮して吉田茂元首相の国葬が例外的に行われたが、それ以降は首相経験者の国葬は一度もない。

最近では内閣と自民による「合同葬」が主流で、安倍氏もこの形式となる可能性が有力視される。

ただ、首相在職日数で憲政史上最長を誇る安倍氏に対し、最大の礼遇を望む支持者の声は強い。国葬令は失効しているが、必要な法律がなければ整備するのが政治の役割でもある。政府内からも「法律をつくって国葬にすればいい」(官邸筋)との声が上がる。

それでも二の足を踏むのは、葬儀に国費を投入することへの批判が根強いからだ。国と自民党が費用を出し合う合同葬でさえ、一部野党や左派メディアは反発する。全額を国が負担する国葬をあえて復活させればさらに強く抵抗し、政権運営にも影響しかねない。

こうしたことを考慮し、政府には「国民葬」を模索する動きもある。内閣と自民党、国民有志の主催で、佐藤栄作元首相が死去した際に行われた。

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