(前略)
そんな哲也さんが20代後半になると、お酒のトラブルが目立つようになります。
「どこでも寝てしまい、朝、道端で目を覚ましたこともあります。電車で寝込んで、財布を盗まれたときは愕然としました。
それだけでなく、飲み会で先輩にタメ口で話し、後日同僚に、『お前、飲み会でヤバイこと言ってたぞ』と耳打ちされて真っ青になったこともあります。まったく記憶がなかったからです。お酒に対して罪悪感を抱くようになったのは、このときからですね」
やがて哲也さんは、32歳でステップアップをはかり転職します。しかし新しい環境になっても、週3日は同僚や後輩を誘って飲み会、週4日は自宅で飲む生活が続きます。休肝日はほとんどありませんでした。会社では、「佐原に誘われたらマズイぞ」「とことん飲まされるぞ」という噂まで立つようになりました。
そんな大量飲酒の毎日に、さらに拍車をかけたのがコロナ禍による在宅ワークです。一日中家にいると、仕事をこなしつつも空き時間が多くなった哲也さん。今までは夕方過ぎから飲み始めていましたが、「昼間から飲んでみようか」というささやきが心を満たした瞬間、お酒に手が伸びるのを止めることができませんでした。
初めは、ワインやウイスキーをチビチビ飲みながら仕事をしていたそうです。しかし、「飲みながらでも、けっこう仕事ができる」と気づき、昼からの飲酒が習慣化していきました。
「当然、飲酒量が驚くほど増えました。昼から長時間コンスタントに飲み続け、ブラックアウトして気がついたらリビングで朝を迎えるという生活の繰り返し。どのくらい飲んでいたか……あまりに大量で把握できていません。たしか、4リットル入りのウイスキーが2週間もちませんでした」
仕事と大量飲酒を両立させる生活は、そう長くは続きません。とうとう体が悲鳴を上げ、二日酔いで激しい頭痛と発熱が現われるようになったのです。倦怠感がひどくなり、朝起きられなくなって、仕事を午前中だけ休むことも多くなりました。
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