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ヤンマガで『ゴリラーマン40』の連載が始まっている。それで久しぶりに『ゴリラーマン』を読み直してみたら、やはり面白かった……と思いつつ、あの時代の感覚を共有していないと、今の読者には伝わりづらいかもな、と思うところもあったので、『ゴリラーマン』を成立させていた時代背景みたいなものを書いてみたい。
『ゴリラーマン』は、とにかく絶妙なさじ加減のマンガだった。
ヤンキーマンガであるけど、ケンカがメインというよりは「かったるい学校生活を過ごす高校生」という感じのマンガで、青春マンガの要素もあるんだけど、「燃えさかる青春」ということでもなく、どことなくドライなところがあった。なおかつ、妙にオタクっぽいところもある。間口が狭いんだか広いんだか、よくわからないけど面白いという、他にないタイプのマンガだった。
ゴリラーマンは、キャラクターの初期設定からして絶妙だった。「まったくしゃべらない」という設定はこのマンガの代名詞でもあるが、それ以外のキャラ設定も光っていた。たとえば彼のお気に入りのタバコが「リベラ」ということ。
正式名称は「リベラ マイルド」だが、「リベラ」という商品が先にあって「リベラ マイルド」があるわけではなく、これ以外にシリーズ製品は存在しない。ゆえに「リベラ」と呼ばれていた。
「リベラ」はJTから発売された国産たばこ。発売当時は喫煙者が圧倒的に多く、たばこのCM規制もなかったから、キャバレー風の華やかなCMをガンガン打っていた。なので、知名度はかなり高かった。なのに、吸っている人をほとんど見かけなかった。
そしてゴリラーマン愛飲の、カロリーメイトドリンク。固形のカロリーメイト自体、当時としては比較的新しいほうの商品で、まだ「チーズ味」と「フルーツ味」の2種類しか存在していなかった。そこへ来てのカロリーメイトドリンク(ミルク味)。何度か飲んだことはあるが、激烈にまずいわけではない。飲めるっちゃ飲める。しかし美味いとは絶対に言えない。そういう微妙な味だった。
当時の缶ジュースの相場は100円。その時代にあって、カロリーメイトドリンクは200円、しかも200mlだから量も少ない。微妙な味なのに量が少なく、値段だけは倍もするジュースを10代が飲むはずないのである。というか、大人もそうそう飲まない。