東大やハーバードの入試には「くじ」が必要だ。マイケル・サンデル教授が「運の存在」に気づかせようとする理由(対談全文・後編)

能力主義社会において、人生のチャンスがトップ大学の入試合格にかかっている場合、弊害の一つが若者にかかるすさまじいプレッシャーです。

入試に向けて詰め込み勉強させる塾に通い、親や教師たちから好成績を取るようプレッシャーにさらされることもある。
幼い頃からのこうした激しいプレッシャーは、特に高校生など若い世代にとって有害です。

この激しいプレッシャーが、入試で合格した学生にとっても、人生の成功も失敗もすべてが自分の努力にかかっているという考えを植え付けることになります。入学する頃には、合格した生徒たちは、自分の懸命な努力こそが合格を勝ち取ったと信じるようになることでしょう。

そして入試で不合格になった学生は「自分のせいで失敗した」「自分の努力が足りなかった」というふうに信じるようになってしまう。

そこで私はくじを提案したのです。
(ハーバード大の)入試に合格した自分の教え子たちに、入試がうまくいったのは運が大いに関わっていたことに気づいてほしいという一心で。

同時に、入試で不合格だった学生にも、自分のコントロールを超えた複数の要因が関与したと知ってほしいと思っています。不合格に対する責任は自分にだけあるのではないと。

私は、ハーバードやスタンフォード、東京大学のような大学の入試委員会が、学びの恩恵を受ける基準を十分満たし、しっかり勉強でき、同級生の学びにも貢献できる学生を、数万人の受験生の中から選んだ上で、くじで合否を決めることを提案しました。そのグループは全体のうち1万人か、2万、あるいは3万程度になるでしょう。

彼らにくじ引きを提案することで、少なくともそのグループに属する受験生やその親たちに、全ては努力次第ではなく、いかなる場合にも必ず運が関与することに気づかせるのです。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6163fac3e4b024dc5282aaf8