https://news.yahoo.co.jp/articles/1448191f1a9373ca37e3ef57b50df24bb05521d8
17歳11カ月で逝った「ワンコ」漫画に描き続けた飼い主が語る記憶 もう立てなくても命を振り絞った家族
ペットと一緒に時を重ねるとき、避けられないのが「老い」の現実です。徐々に身体(からだ)が弱り、できないことが増えていく……。そんな愛犬の姿を、漫画の形で留(とど)めてきた人物がいます。最近ツイッター上で公開した、息を引き取るまでの日々を描いた作品が、ネット上で話題です。年をとるにつれて、家族としての愛情が一層深まったという作者に、思いを聞きました。
家族の「大往生」を描いた作品
「少し前になりますが、ウチのワンコが旅立ちました」「ワンコが持ってる命の、最後のひとしずくまで、私と一緒に居てくれました」
今年6月24日、そんな書き込みと共に、4ページの漫画がツイートされました。
描かれているのは、17歳11カ月の愛犬と暮らす女性です。愛犬は高齢ゆえ、水もご飯も受け付けない状態が続いています。
自力で歩けない家族を、いつものように抱きかかえ、散歩に出かけた女性。
河川敷に差し掛かったとき、女性はふと、腕の中に目をやりました。すると、もう動かない、愛犬の姿があったのです。
「大往生でした」。そんなモノローグと共に、悲しみに全身を震わせる女性の姿が描かれ、漫画は幕を閉じます。
へたり込む飼い主に差し出した頭
今回の作品を手掛けたのは、ワンコ17歳さん(@wanko15sai)です。老いゆく愛犬との暮らしを、共に生きた記録として、イラストにしたためてきました。
「臆病で、ワガママで、ツンデレ。若い頃から、めったに飼い主にべたべたすることはなかった。『古き良き日本の雑種犬』でした(笑)」。約18年前、保護犬として引き取った女の子・通称「ワンコ」の性格を、そのように評します。
人間と適度に距離を取る。そんなワンコが、思わぬ行動に出たことがありました。5月31日に公開した漫画に、その一部始終が刻まれています。
気落ちし、へたり込む、飼い主のワンコ17歳さん。異変に気付いた愛犬が、ぶるぶると身体を震わせ歩み寄ります。その頭に触れるうち、ワンコ17歳さんは声をあげて号泣していました。そしていつしか、心が軽くなっていることに気づいたのです。
「ワンコがまだ4、5歳の頃だったでしょうか。当時の私は、失敗やショックな事件が重なり、ひどく自信を無くしていました。でも誰かに話をしたり、相談したり出来なかった。『このまま壊れて姿を消してしまいたい』と考えていました」
そんな飼い主の前で、愛犬が頭を差し出す。普段ならあり得ない光景でした。おでこを見たワンコ17歳さんは、ついなでたくなったといいます。「泣けば良いんだよ! 泣いちゃえ!」。そう言われたようで、不意に涙があふれたそうです。
歩けない愛犬の身体をなでた
私たちは、お互いを思い合う、掛け替えのない家族なのだ――。そう思っていた13〜14歳頃、ワンコが大病をしてしまいます。視覚。聴覚。身体の自由。いずれも奪われてなお、心理的な結びつきは保たれ続けたと振り返ります。
晩年、ワンコは寝たきりになり、「老犬介護」が始まりました。ご飯は何とか食べられても、水がうまく飲めません。スポイトで口に含ませようとすると、ピューッと噴き出してしまうことも。6月21日に投稿した漫画に、その様子を描きました。
「17歳を過ぎたあたりから、ワンコは歩けなくなりました。犬が歩けないなんて、飼い主にはショックだろう。そう予想していました。でも実際に自分が体験してみると、慌てることなく『抱っこでお散歩しようか?』という気持ちになれました」
息を引き取る3カ月ほど前から、徐々に活力を失い始めた愛犬。食欲も、体重も、ゆっくり、ゆっくり減っていきました。「そうか、今日は食べないんだね。よしよし」。ワンコ17歳さんは折に触れて、身体をなでてあげたといいます。
飼い主に抱き留められながら、朝夕楽しんだ散歩。もはや自らの足で大地を踏みしめられずとも、ワンコはとても楽しそうな表情を見せました。そして自宅で夜鳴きしたとき、近くに家族がいると分かると、安心した様子で過ごしていたそうです。
「ワンコの姿は、一緒にいる私たちも幸せな気持ちにさせました。徐々に老いを重ねることで、家族を悲しませないようにしていたのかもしれません。一緒に生きるって、こういうことなんだな。何となく、そう感じていました」
腕の中で動かなくなったワンコ
ある日の夕方、午後4時半。ワンコ17歳さんは、愛犬を抱いて散歩していました。いつもと同じ時間に、いつもと同じ河川敷で、いつもと同じように川を眺めます。