■償却資産課税が設備投資を損なう

地方財政のテキストにおいて固定資産税は「望ましい地方税」の代表例として
あげられる。ただし,その前提は土地に対する課税であることだ。しかし実際の
ところ,日本の固定資産税は土地に加えて,家屋や機械設備等,償却資産をその
対象に含む。とくに償却資産に対する課税は,固定資産税に法人税とは異なる形
での資本課税の性格を与えてきた。そこで本稿では資本税としての固定資産税
の経済効果を検証する。具体的には工業統計調査および経済センサス 活動調査
(経済産業省・総務省)の事業所別パネルデータを用いて,固定資産税の償却資
産課税が設備投資(有形固定資産の形成)に及ぼす影響について実証した。推定
結果からは,固定資産税が設備投資を損なっている(マイナス効果が有意になっ
ている)こと,とくに流動性制約に直面している(キャッシュフローが負の)企
業に対するマイナス効果が高いことが明らかになった。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/pfsjipf/16/0/16_172/_pdf