■日本にしか無い償却資産課税が企業の設備投資を阻害し国際競争力を低下させている

地方財政のテキストにおいて固定資産税は「望ましい地方税」の代表例として
あげられる。ただし,その前提は土地に対する課税であることだ。しかし実際の
ところ,日本の固定資産税は土地に加えて,家屋や機械設備等,償却資産をその
対象に含む。とくに償却資産に対する課税は,固定資産税に法人税とは異なる形
での資本課税の性格を与えてきた。そこで本稿では資本税としての固定資産税
の経済効果を検証する。具体的には工業統計調査および経済センサス 活動調査
(経済産業省・総務省)の事業所別パネルデータを用いて,固定資産税の償却資
産課税が設備投資(有形固定資産の形成)に及ぼす影響について実証した。推定
結果からは,固定資産税が設備投資を損なっている(マイナス効果が有意になっ
ている)こと,とくに流動性制約に直面している(キャッシュフローが負の)企
業に対するマイナス効果が高いことが明らかになった。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/pfsjipf/16/0/16_172/_pdf

企業の設備投資への影響
経済産業省の事業者に対するアンケート調査によれば、償却資産に係る固定資産税は、
企業の設備投資の阻害要因になっているという指摘がある。また、固定資産税がいわゆ
る財産税としての性格を有するため、赤字企業であっても恒常的に税負担が生じること
になる。
このため、現行の制度は、企業活動の活性化を阻害するとともに、企業の生産性の向
上にもマイナス要因になっていると考えられる。また、諸外国には例の少ない課税制度
であるため、企業の国際競争力の観点からの問題も指摘されている。

https://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/doc/nichizeiren/business/taxcouncil/toushin_H28.pdf

「日本税理士会連合会 令和2年度税制改正に関する建議書」(R 元.6.27)抜粋
Ⅳ 税制改正建議項目
21.償却資産に係る固定資産税制度について、廃止を検討するなど、そのあり方を抜
本的に見直すこと。
償却資産に係る固定資産税制度については、事業者の設備投資の阻害要因になって
いること、現状では課税客体の捕捉が不十分であること、固定資産台帳の整理が賦課
期日と決算日の年2回必要になるなど事業者に過度な事務負担を強いていること等
の問題があり、また、主要諸外国において償却資産に対し課税している例は少なく、
国際競争力の観点からも問題がある。したがって、同制度は速やかに廃止すべきであ
る。
https://www.recpas.or.jp/new/jigyo/report_web/pdf/r2_all/r2_report_syokyaku.pdf