[社説]何のための薬の「緊急承認制度」なのか
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK214EF0R20C22A7000000/

緊急承認制度は米国の緊急使用許可(EUA)を手本にした。
感染者の急増や医療の逼迫といった緊急度合いも考慮し、効果が科学的に「確定」しなくても、
有効性の解釈を広げて承認できる。要は「仮免許」のような位置づけだ。

しかし、その有効性とは何かが明確に示されておらず、
審議は従来の科学的知見にこだわったものになった。
安全性に問題がないのであれば、緊急承認し、使うかどうかの判断は
現場の医師や患者に委ねることもできただろう。

国産品で安定供給される飲み薬をうまく活用すれば、自宅療養の拡充などで
医療や保健の現場を逼迫させずにすむかもしれない。

今回、塩野義は承認されると100万人分を供給するよう国と合意しており、
いつでもすぐに出荷できる体制にある。
名ばかりの「緊急承認制度」は製薬会社の開発意欲をそぐことにもなる。
国内発のコロナ医薬品はまだ登場していない。実現がまた遠のいた。