同地域はシロクマの生息地ではあるが、普段シロクマが人間の方へ近づいてくることはないという。
しかしこの日は珍しく近寄って来たため、家の住人は警戒しながら静かにシロクマの動きを見守った。 当時の様子を撮影した動画には格子状の仕切りの隙間からおずおずと顔を覗かせるシロクマが映っており、シロクマが顔を上げると口に缶を咥えている様子が確認できる。
一見すると缶を渡そうとしているようにも見え住人は手を伸ばして缶を掴んで引っ張ったが、シロクマが缶を咥えたままだったので取ることはできなかった。
その後もシロクマは暴れたりする様子はなく、住人を信頼したのかさらに近づいて格子の隙間に顔を入れて口を差し出した。そして住人が再び缶を引っ張ってみると、缶の容器と蓋の間にシロクマの舌が挟まっていることが判明したのだ。
シロクマは挟まった舌を自力で外すことができず、住人に取ってもらうために近づいてきたのだった。 このシロクマは疲れ切った様子だったと言い、動画を撮影した住民以外の家も訪れて助けを求めていた。
しかしシロクマの舌はがっちりと缶に挟まってしまっており、シロクマを怖がらせずに缶を取り除くことはできなかったため住民達はシロクマを助けることができなかった。

このシロクマを救うためモスクワ動物園の獣医チームが救助の準備を進めた。同動物園のスベトラーナ・アクロバ園長(Svetlana Akulova)は「計画ではシロクマに鎮静剤を与えて缶を取り外し、集落から遠く離れた場所に移動させる予定です。
またお腹を空かせたシロクマの回復のため、魚を50キロ用意しました」と明かした。 救助チームは早速ディクソンに向かったが、人口わずか676人の世界最北端にある集落の1つで、天候の悪さが影響してなかなかたどり着けなかった。
しかしようやくシロクマのもとに到着し、予定通り鎮静剤を打ってシロクマを眠らせて缶の除去作業に入った。 2歳くらいの若い雌と判明し“モネトチカ(Monetochka)”と名付けられたこのシロクマの舌から缶を外すと、シロクマの舌には大きな傷があり出血していた。
幸いにも舌を動かす主要な筋肉にダメージはなかったため、獣医チームは抗生物質と抗炎症剤を投与して傷の手当を行った。その後、衰弱していたモネトチカはヘリコプターで集落から100キロほど離れた場所に輸送され、獣医チームはモネトチカを草原に寝かせ周囲に大量の魚を添えるとヘリコプターでその場を後にした。

https://japan.techinsight.jp/2022/07/iruy07221019.html/2

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https://youtu.be/R35pXP4XV1M