どんぶらこ、どんぶらこと流れてきたのは、桃ではなく、紙幣だった。富山の用水路で1万円札が次から次へと流れてきて話題だ。振り返ると、平成の初期は億単位の“落とし物”が見つかったこともある。そんな裏を探ってみると……。

 1万円札が発見されたのは、富山市奥田本町の用水路200メートルほどの間だ。水深約30センチで、今月19日昼ごろから近くに住む複数の住人が水草などに引っ掛かっていた1万円札を見つけては拾い集め、警察に届けた。総額で70万円を超えるとみられる。警察は落とし物として保管し、落とし主を捜している。

 令和の桃太郎的な大金流出の珍事に町は騒動になっているそうだが、歴史的には決して珍しいことではない。

■銀座に1億円、川崎の竹やぶに2億円超

 1980年には、40代男性が銀座の道路脇で現金1億円が入った風呂敷包みを発見。警察に拾得物として届けている。その9年後には、川崎の竹やぶで現金1億4500万円が入ったバッグが、その直後さらに9000万円入りの別のバッグも出てきて、ワイドショーなどで大きく取り上げられた。

 川崎の報道が過熱し、「ゴールドラッシュか」とばかりにスコップ片手に近所の竹やぶに入る人が続出。日本中の竹やぶが掘り返される事態に発展したが、1カ月ほどで通販会社の社長が持ち主として名乗り出たことから、スコップは軍手と一緒に投げ捨てられ、“平成の竹取物語”はあっけない幕切れとなった。

 竹の子族が原宿を練り歩いた1980年、ドリームジャンボ宝くじの1等賞金は3000万円。経済はバブルに向かって右肩上がりで、87年にはジャンボの1等賞金が6000万円に倍増されたとはいえ、億万長者は夢のまた夢だったのが80年代だ。

ネコババは遺失物等横領罪や窃盗罪に

 スコップ片手に竹やぶに入るのもうなずけるようなオイシイ話。ちなみに真の落とし主に先んじて「私が落としました」と名乗り出ても、認められる可能性はほぼゼロだという。

 弁護士の山口宏氏が言う。

「①億単位の現金を所有すること②その現金を何らかの理由で移動させること③そこで落としたことの証拠を示して、落とし物の現金が自分のものであることを証明することが必要です。たとえば①の証明には、銀行口座の入出金記録や年収の証明などで、②の理由がたとえばキャッシュでの支払いだとすれば、その支払いの根拠になる契約書や支払期日を示した書類など。そして③は防犯カメラの映像や第三者の証言になります。これらをすべて用意するのは、真の落とし主でないと難しいでしょう」

 もし落とし物の大金を見つけ、「だれも見ていないから」とネコババしたらどうなるのか。

「落とし物をネコババすると、刑事事件として遺失物等横領罪や窃盗罪などに問われる可能性があります。刑罰は、前者が『1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料』で、後者が『10年以下の懲役または50万円以下の罰金』です。それで罪に問われると、社会人は人生を棒に振ることになりますから、きちんと警察に届けるべきです」
https://news.yahoo.co.jp/articles/8a5353dd5f59326705c72c2b5942f8fef65d4a72