数年前、自動車関連企業の日本人設計者から私の事務所の無料相談コーナーに相談が寄せられました。「薄給のため、韓国の大企業に転職したい」というのです。偶然にもその企業が日本人設計者を募集していたので、設計コンサルタントの立場から無償で斡旋(あっせん)しました。面談したいという企業側の意向を伝え、日本人設計者には韓国へ渡航してもらいました。

 しかし、結果は散々なものでした。即却下を食らってしまったのです。面談の内容を詳しく聞いて私の事務所で分析したところ、その理由は次のように推測されました。

(1)公差計算ができない。従って、意味もなく何でも高精度を要求する。当然、コストアップとなる。
(2)設計書が作成できない。従って、設計審査(DR)ができない。設計審査すら臨めないという意味。
(3)コストに関する設計見積もりができない。コストの設計審査ができない。コストに関係する検図もできない。

 その韓国の大企業によれば、日本人の生産技術者と研究者は今でもスカウトの対象ですが、「日本人設計者の採用はお断り」とのことでした。私の評価や信用も一時的とはいえ、急落してしまいました。有名大学卒で日本の大企業に勤務している設計者を無償で斡旋してやるぞという意識が前に出てしまったのかもしれません。まずは私が、転職希望者と韓国の大企業が求める日本人設計者像とを確認すべきだったと反省しています。

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01622/00017/