過労で疲弊する中国VTuberの「中の人」たち

「実在の有名人を雇うには費用がかかるし、リスクを伴うものだ。実際、中国では何人もの有名人がスキャンダルに巻き込まれている……そして同国の共産党はファンダム文化を目の敵にし、有名人をオンラインでランク付けすることを禁じた。著名人は模範となるべき存在なのだ」

そう報じるのは英誌「エコノミスト」だ。中国では生身のインフルエンサーがよく物議を醸す発言をして、SNSや動画配信プラットフォームから姿を消している。

こうした事態を受けて、多くの中国企業が人間ではなく「バーチャルアイドル」と広告などの仕事をすることを選んでいるのだ。バーチャルな存在なら怒ったり、タブーな話題を持ち出したり、不倫したり、脱税で逮捕されたりしないはず──という考えである。

たとえば中国で人気なバーチャルアイドルとして、VTuberのVox Akuma(ヴォックス・アクマ)やバーチャルシンガー洛天依(ルォ・テンイ)がいる。

こうしたバーチャルアイドルの「見た目」はたしかにコンピュータで生成される。だがデジタルアバターを操作するのは、モーションキャプチャーを装着した匿名のパフォーマーだ。アクマを演じる俳優が笑えば「アクマ」が笑い、ルオを演じる人が手を振れば「ルオ」も手を振る。彼らはライブストリーミングプラットフォームで何百万人もの視聴者の前で歌い、踊り、ファンはこれに課金するのだ。

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