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タワマンに住む「年収1,400万円」のパワーカップル…勝ち組夫婦から一転、自己破産の危機
2022年上半期首都圏の新築マンションは、販売戸数は減ったものの、平均価格は前年同時期よりも上昇しました。価格上昇を牽引しているのが、駅チカ・高価格帯のタワマンです。いまだ人気が衰えぬタワマンですが、売却を決断する人も増えているようです。みていきましょう。
平成バブル超えの首都圏マンション価格…いったい誰が買っている?
東京23区を中心に、首都圏近郊の新築マンション価格が高止まりしています。
不動産経済研究所によると、2022年6月時点の首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県)の新築マンション平均価格は1戸当たり6,450万円。平成バブル期(1990年)の6,123万円を超えています。特に、東京23区では平均価格が8,103万円まで高騰。都内で働く会社員の平均年収595万2,000円(厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』)ですから、新築マンション価格は平均年収のおよそ13.6倍……普通に働いているだけではとても買えそうにありません。
ではなぜここまで価格が高騰しているのでしょうか。人件費の上昇や最近の円安による資材高騰など、いくつか理由はありますが、大きな要因のひとつに「タワーマンションの増加」があります。
以前は、東京都心から湾岸部にかけて建てられていたものが、郊外、さらに地方の中核都市にも建てられて、いまやプレミアム感はなくなりつつあるものの、東京都心の物件は別物。郊外の物件であっても、高層階であれば億超えは当たり前。東京・都心の物件であれば、全戸億ションといったものも珍しくありません。
ちなみに2021年の販売最高額は「パークコート神宮北参道ザ タワー」(専有面積238.55u)の13億7,000万円。ここまで高いと、部屋や設備の想像さえも難しくなります。
このようないわゆる「億ション」に住んでいるのは一握りの富裕層だけなのでしょうか。じつは、そうではありません。近年、億を超えるタワマン市場を引っ張っているのが「パワーカップル」と呼ばれる夫婦です。
パワーカップルに明確な定義はありませんが、よくいわれているのが「世帯年収1400万円以上、個人年収700万円以上、30〜50代の高収入カップル」です。また、パワーカップルに共通する特徴として「高い消費意欲」が挙げられます。働き盛りで世帯年収が高く、消費意欲も旺盛なパワーカップルは、タワマンの主要な購入層として注目されています。
このような夫婦が仕事と家庭と子育てを両立するために、職住が近い都心の高額タワマンを選んでいるわけです。
ひと握りのパワーカップル…タワマン購入に潜む「破産リスク」
ニッセイ基礎研究所が発表したレポートによると、夫婦ともに年収が700万円以上の世帯は、2016年には全国で25万世帯で全世帯の約0.5%、共働き世帯の1.8%だとしています。このような勝ち組パワーカップルが億ションを買う際、利用するのは多くがペアローンです。
では、仮に世帯年収1,400万円のパワーカップルが、1億円のタワマン購入を考えたとしましょう。住宅ローンで無理のない返済額の目安とされる返済負担率30%で計算すると、毎月の返済額は35万円となります。金融機関の審査金利3.0%、返済期間30年でシミュレーションをおこなったところ、毎月の返済額35万円の範囲内での借入可能額は、およそ8,300万円となりました。自己資金を入れると、十分購入可能といえるでしょう。
しかし、ペアローンを組んでタワマンを購入したパワーカップルを待ち受ける「収入」のリスクには注意が必要です。
タワマン購入は、あくまでも夫婦ともに収入があることが前提。仮に夫婦ともに40歳のパワーカップルだとしたら、30年間、収入が途絶えることなく70歳まで共働きを続けることが条件になります。30年間、夫婦ともに安定的な収入が得られる、というのは少々非現実的です。
また、仮に退職金で繰り上げ返済を行うとすると、適用金利1.0%で借入可能額8,300万円を借りている場合、60歳時点での借入残高はおよそ3,000万円。不可能ではありませんが、老後の資金が大幅な減少は避けられません。
病気や親の介護などで収入が途絶えることも考えられますし、このコロナ禍で減給や賞与なしとなった会社員が多くいたように、パワーカップルにも収入減のリスクは常につきまといます。