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ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問を巡って、米中当局者の舌戦がエスカレートしている。
このような状況下で、台湾対岸の中国軍航空基地の航空写真に映し出された骨董品ともいえるJ-6戦闘機によって、
台湾との戦闘を想定している米軍関係者たちの警戒が一段と高まっている。

 龍田航空基地は、台北に最も近接(およそ200km)している中国軍の航空基地であるが。
その龍田基地が大幅に増強された様子が民間の衛星写真に鮮明に捉えられた。

20年近く前の龍田基地の航空写真には中国軍の「J-6」戦闘機の姿が捉えられていた。
今回の写真にもJ-6戦闘機の機影が新型戦闘機などとともに駐機している模様が写っている。

 J-6戦闘機は1950年代にソ連のMIG-19戦闘機をベースに中国で生産され始めた第2世代に分類されるジェット戦闘機だ。
中国空軍や海軍航空隊では、航空戦力の近代化成果が軌道に乗り始めた2000年代初頭まで、多数のJ-6が実戦配備されていた。
その後、練習機として使用されていたが2010年頃には中国軍から姿を消した。

 しかしながら、中国軍はJ-6戦闘機を無人機に改造して再利用を図り、すでに500機以上のJ-6ドローンが生み出されているとものと考えられている。
パイロットが操縦するための装備やパイロットを保護するための設備などをすべて取り払うことができるJ-6ドローンには、
より多くのミサイルや爆弾を装填することが可能だ。

初期型のJ-6ドローンは単純な偵察や攻撃あるいは特攻任務に投入される無人攻撃機であったが、
現在、その一部は敵のレーダーを撹乱したり破壊する能力に特化した「J-6W」と呼ばれている無人電子戦機へと進化させられつつあるという。

 今回、龍田航空基地で確認された21機のJ-6戦闘機の機影は、おそらくJ-6ドローンおよび最新型のJ-6W無人電子戦機と考えられる。

皮切りは無人機による飽和攻撃
 龍田航空基地にJ-6W無人電子戦機とJ-11戦闘機などの航空機がスタンバイしているのは、
「ペロシ下院議長が台湾を訪問する際に、下院議長が搭乗する航空機に米軍が戦闘機の護衛を付けた場合には、撃墜される覚悟をしなければならない」
といった中国側の警告が口先だけでないことを米軍側に見せつけていると考えられている。

 なぜならば、台湾を巡る中国 対 台湾・米国の軍事衝突が勃発した場合、以前は中国軍による第1波攻撃は台湾の戦略要地に対する長射程ミサイル(長距離巡航ミサイルと弾道ミサイル)の飽和攻撃と考えられていたが、
その後の高性能無人航空機戦力の充実に伴って、ミサイル飽和攻撃に先立って無人機による飽和攻撃が敢行されるものと考えられるようになっているからだ。

 すなわち、数百機にのぼるJ-6W無人電子戦機による飽和攻撃で台湾軍の防空警戒システムに大打撃を加えるのである。

 同時に、多数のJ-6ドローンや「J-7」ドローンによる囮(おとり)作戦的な特攻飽和攻撃も実施される(中国空軍は、
J-6同様に旧式戦闘機のJ-7を無人攻撃機J-7ドローンに改造しつつある。中国空軍はJ-7を600機以上装備していた)。

 これらのJ-6ドローンやJ-7ドローンに対して、台湾軍は多数の対空ミサイルを発射したり、戦闘機や早期警戒機を出撃させることになるが、中国空軍はドローン群とともに新鋭戦闘機も出撃させて、
台湾空軍なけなしの早期警戒管制機(「E-2」ホークアイを6機保有)を破壊し、場合によっては戦闘機をも撃墜する。

 さらに中国空軍は、ドローンの後方から「J-16D」電子戦機(有人でJ-6Wより強力)を飛来させ、台湾防空網を麻痺させてしまうことになる。

 このようなドローンによる飽和攻撃に引き続いて、長射程ミサイルによる飽和攻撃が実施されるものと考えられているのである。