安倍政治といえば、憲法改正への執念、日米安保体制の強化、地球儀を俯瞰(ふかん)する外交、そしてアベノミクスの4本柱が思い浮かぶ。

いずれも膨大な検証を要するテーマだが、このうちアベノミクスが前の3つと異なるのは、それまで テクノクラートに任せてきたマクロ経済政策の分野に政治家が旗を立て、自らレールを敷いたことにある。しかも、その路線はポスト安倍の2代の政権に引き継がれ、現在も継続している。

もともと政治主導で進む外交安保と異なり、マクロ経済政策には高度な専門知識が求められる。このため、アベノミクスの評価は国内でも真っ二つに分かれ、今なお激しい論争が続く。筆者自身、現在の異次元緩和が正常化されるまでアベノミクスの総括はできないと考える一人だが、とりあえず今日に至るまでの経緯と実績を振り返ってみたい。

アベノミクスは「大胆な金融緩和」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」からなる「3本の矢」で構成されている。だが、提唱者である安倍の頭には、そもそも「無制限の金融緩和」しか存在しなかった。思い切った量的緩和を行えば物価が上がり、高い経済成長が実現すると信じていたのだ。

しかし、この「一本足打法」に不安を抱いた財務省は、以前から温めていた財政政策と成長戦略を加えた3点セットに切り替えるよう安倍と財務相の麻生太郎を口説く。安倍はしぶしぶこれを受け入れたが、それでも自説を曲げることはなく、黒田東彦という理解者を得て「異次元緩和」へと突き進んでいった。

以下略 https://news.yahoo.co.jp/articles/6928a852584a75c163449aa138e195536084c72f