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出産祝い、赤か青色だけ? 世界のジェンダー多様化、どこまで進んだ

今年も世界経済フォーラム(WEF)が「ジェンダーギャップ報告書」を発表しました。男女平等がどれほど実現しているかがまとめられたものですが、男女の枠にとらわれないジェンダーの多様化も進んでいます。英国のユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(UCL)のジェンダー論専任講師として10年以上にわたり教壇に立ち続ける木村真紀さんに、世界の現状を聞きました。

――性自認が男女どちらでもないノンバイナリーの代名詞「they/them」が米国で「今年の言葉」に選ばれたのは2019年。欧米ではその後、ノンバイナリーやジェンダーの多様性は定着したのでしょうか?

 私が10年にUCLで授業を引き継いだとき、ジェンダーというと女性の抱える不平等の話ばかりでした。授業では男性の抱える問題やLGBT(性的少数者)のことも取り上げてきましたが、心と体の性が多様なトランスジェンダーやノンバイナリーを前面に取り上げるようになったのは4、5年前からです。

 「they/them」などの呼称が注目されるようになったのはここ2、3年。最近では新型コロナウイルスの影響でオンライン会議が増えて、名前のあとに自分がどう呼ばれたいかを「she/her」「they/them」と入れるようになった。大学から、メールの署名に入れるようにとアドバイスもありました。でもここまで広がるより前に、学生から推薦状をお願いされた際、「『they/them』で書いてほしい」と頼まれました。そういうことは学生の方が早いし、柔軟ですよね。

 ただ、個人的には「she/her」という代名詞を入れることで逆にバイナリー(男性か女性か、トランスジェンダーか生まれたときの性別に違和感のないシスジェンダーか、というような二択だけの考え方)を再生産するような気がして、使ってはいません。でも、ファッショナブルだからという一時的な流行ではなく、浸透しています。