周到な戦争準備がロシアに勝利もたらす

 ウクライナ戦争は長期消耗戦になっているが、依然としてロシア軍が優勢を維持し、占領地域を拡大している。

 ケルソン州のドニエプル河西岸地域ではウクライナ軍が反攻を準備中とされ、ロシア軍も東部やクリミア正面から兵力を南部に転用し増強中とみられている。

 しかし、ロシアは、前述したプーチン大統領の開戦当日の演説でも明らかなように、NATOの東方拡大の脅威がついに隣国ウクライナにまで及んだことを、国家安全保障に対する直接的脅威と受け取っている。

 このような直接的脅威に直面し、ウクライナでの将来戦を予期して2019年の数年前のポロシェンコ親西欧政権の成立の頃から、軍事戦略の科学的研究、編制装備の在り方、戦力の向上、軍需生産インフラの整備などに国家を挙げて取り組んできたことは、ゲラシモフ演説でも明確である。

 その計画通りにすべて実現したとは言えないにせよ、その成果の一部はウクライナ戦争でも発揮されているとみられる。

 そうである以上、単にNATOの装備や教義を取り入れNATO軍化を進めてきただけのウクライナ軍は、国家総力を挙げて5年以上をかけて、独自の軍事戦略・軍事研究に基づき戦争準備を進めてきたロシア軍に対抗できないであろう。

 ロシアの国家総力をあげた周到な準備が、ロシアに最終的な勝利をもたらす可能性は高い。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71267