2030年代に世界一の経済大国になるも、「豊かな経済大国」にはなれない中国

30年代には瞬間風速的にアメリカを抜くも、一人当たりの国民所得は少ないまま。先端技術で後れをとり、日本のような「貯金」もないままに急速な高齢化社会へ突入する。

ドル建てのGDPには一般的にその国の国力が、PPPで換算したGDPにはその国の生活水準が反映される。つまり中国経済の未来に関する最も気になる問いは、中国がアメリカをドル建てGDPで超えることは可能かどうか、ということになる。

中国はいまだに中所得国だから、理論上は成熟した高所得国であるアメリカよりも伸びしろは大きい。

国民の平均値で比べた場合、所有にしても消費にしてもアメリカには及ばないから、つまりは需要の伸びも中国のほうが大きくなるはずだ。加えて技術力や、労働者の教育水準や生産性でも中国はアメリカの後塵を拝している。言い換えると、生産性の伸びしろはアメリカよりも大きい。

米政府の予測によれば、20~30年の10年間に米経済は年平均2.3%しか伸びないという。対照的に中国の年平均の経済成長率はアメリカを上回りそうだ。信用格付け機関S&Pグローバル・レーティングは同じ時期の中国経済の成長率を、アメリカのほぼ2倍の年平均4.6%と予測している。

しかし、たとえ中国がこれだけの成長率を達成できるとしても、31年の経済規模は27兆7200億ドルで、アメリカの28兆8500億ドルにはわずかに届かない。中国がさらに数年間、アメリカを2ポイントほど上回る成長率を維持できれば、30年代半ばにはアメリカを超えられるだろう。


「奇跡」の再来は望めない

もし中国が年平均5%の成長率を維持できれば、31年の経済規模は28兆8100億ドルとなり、アメリカとほぼ肩を並べることになる。つまりあと10年で世界一の経済大国の座をアメリカから奪うには、中国は年平均5%を超える成長を達成しなければならないわけだ。

だがGDPは、その国の国力や暮らしの豊かさを測るのに必ずしも最適な物差しとは言えない。30年代初頭に中国は経済規模でアメリカと肩を並べるかもしれないが、1人当たりの国民所得では水をあけられたままだろう。

ちなみに20年のデータでは、中国の1人当たり国民所得はわずか1万400ドルで、アメリカ(6万3000ドル)の約6分の1だ。

30年の中国の人口は14億6000万人超と予想されている。中国が31年まで年平均5%の経済成長を達成し、31年にGDPでアメリカと並んだと仮定しても、1人当たり国民所得は1万9700ドルにしかならない。

対照的に、アメリカの人口は30年には3億5500万人程度になるとみられ、31年の1人当たり国民所得は8万2000ドルを少し超えたくらいになるだろう。中国の約4.2倍だ。

さらに重要なことに、中国がアメリカに経済規模で追い付いたところで、30年代になっても技術力の差は相当に大きいままだろう。

そのため、世界最大の経済大国という称号は手に入ったとしても、中国は世界最強どころか世界で最も豊かな経済大国にもなれない。その称号はアメリカのものであり続ける。

続きは↓
https://news.yahoo.co.jp/articles/d14a07e5d948ee3f09d6b52bb276fdf1501bb246?page=3