いま中国の女性たちの間で「上野千鶴子の著書」が大ブームになっているこれだけの理由

いま上野千鶴子の著作が中国の女性の間で大人気になっている。その背景にあるのは、若い女性らの間で結婚を恐れる「恐婚族」が急増だ。

実際に、ソーシャルメディア上で「恐婚」のキーワード検索から上野千鶴子のファンの書き込みにたどり着くことができる。
2015年に中国語に翻訳された『女ぎらい』(中国語タイトルは『厭女』)が今も大きな反響を呼んでいるのだ。

『女ぎらい』は婚活やDV、モテといった現象から家父長制の核心である「ミソジニー」を分析した本だ。

書籍などの内容を紹介する中国最大級の情報サイト「豆弁」で、『厭女』は10点満点中の9.1点と高評価。
特に都市部に住む経済的に自立した女性から支持を得ている。
本書には結婚を必要だと感じなくなっている「恐婚族」の想いが詰まっているそうだ。

「この一冊が私の結婚したくない理由をすべて説明してくれた」──
女性から絶大な人気を得ているSNS「小紅書(RED)」で、上海に住む20代の女性は『厭女』をこう推薦した。

「すべての女性が読むべき本である(もちろん男性もね)」と綴り、
「舌鋒鋭い指摘が心に刺さった」との感想には、フォロワーなどから多くの共感メッセージが寄せられた。

中国版ツイッターの「微博(ウェイボ)」でも同様な投稿が高頻度で展開され、読者からは
「初めて自分がフェミニストだと気づいた」「頷きっぱなしで読み終えた」「スッキリした」といったコメントが書き込まれている。

女性の活躍大国でありながらも男女の役割に対する固定観念にとらわれている部分は日本と似通うものがある。
結婚・妊娠・出産といったライフイベントによる生活の変化に苦しみたくないのもまた同じだ。

「この本をバイブルにして生きる」──そう書き込みをした30代の女性は、家父長制の中に育ち、
ジェンダー秩序を巡る矛盾や違和感を覚えながら不安やストレスを抱えた生活を送っていたという。

(略)

彼女たちは手に職を持ち、経済的に問題なく暮らせている。
なので、父親に次ぐ夫からの支配を避けたいとも考えているのだ。彼女たちは、悠々自適な人生を謳歌したいと願う。

そんな流れから中国で結婚する男女は激減し、2021年は763万組と、10年前に比べて4割以上も減少。
同年の出生数は1062万人と5年連続で減少し、1949年の建国以来最少となった。

共産党の指導部はこうした「恐婚族」の急拡大に頭を抱えている。
相次ぐ施策導入も押し上げ効果は乏しいままだ。依然として、結婚数の激減や少子化に歯止めがかからない状態となっている。

https://courrier.jp/news/archives/293781