米男性受刑者が女性監獄に忍び込み、数十人を性的暴行した「恐怖の夜」

米インディアナ州クラーク郡刑務所の女性受刑者用の監房のドアが開き、男性受刑者2人が侵入してきたのは、2021年10月23日の夜遅くだった。タオルや毛布で覆面をした男たちは女性受刑者を脅し、看守に知らせれば殺すと言った。

それが「恐怖の一夜」の始まりだった。

その後さらに多くの男たちが加わり、翌24日の未明までに、数十人の女性たちに性的暴行を加えたと、米紙「ワシントン・ポスト」は報じている。

男たちは性器を露出し、女性たちに向かって卑猥な言葉を叫んだ。何十人もの女性受刑者たちの胸や太ももを触ったという。

しかし彼女たちに逃げ場はなかった。毛布の下、トイレ、暗い部屋の片隅に隠れようとしたが、確実に隠れられる場所など監房にはなかった。

女性受刑者の1人は、数人の男たちにロッカーの壁に押しつけられて胸をまさぐられたという。彼女はレイプされ、性器ヘルペスに感染した。

もう1人レイプされた女性受刑者は妊娠し、その後流産した。

襲撃は2時間以上続いたものの、刑務所の看守は誰も止めに来なかった。しかし刑務所内には監視カメラが設置されており、男たちが監房に入るところや、その後の襲撃の様子は映っていたはずだ。見回りの看守が様子を見にくることもなかった。

米メディア「CNN」によると、男たちの侵入から数時間後に、ひとりの女性受刑者が非常ボタンを押して叫んで看守を呼んだところ、男たちは逃げ出し、襲撃は終わった。

しかし、その後駆けつけた刑務所の職員は、なんと彼女たちを逆に罰したという。

また、刑務所の職員は、女性用監房の鍵が紛失したままであるにもかかわらず、数日間は鍵を交換しなかった。その間、女性たちは、男性受刑者がまた戻ってくるのではないかという恐怖を強いられたという。



2022年6月21日、被害に遭った女性のうち20人が、刑務所を管轄していたクラーク郡の保安官ジェイミー・ノエルと元刑務官デビッド・ロウに対して民事訴訟を起こした。

この2人は、男性受刑者が女性受刑者の収容施設に入るのを許し、2時間以上も助けにこなかったというのが、原告側の主張だ。

さらに7月25日には、別の8人の被害女性たちが原告となり、追加の訴訟が起こされた。そこで主張されたのは、刑務官のロウは1000ドルを受け取り、男性受刑者2人に刑務所内のいくつかの鍵を渡したということだ。

ロウは事件の数日後に解雇され、すでに公務執行妨害や受刑者の逃亡幇助などの罪で起訴されているが、女性たちは刑務所自体の責任を追求している。

事件から9ヵ月が経った今も、女性の多くはまだ精神的な苦しみを負っている。被害者女性らは不眠やフラッシュバックに悩まされていると、原告の代理人を務めるスティーブ・ワグナー弁護士は述べる。

「被害女性たちは加害者による脅威にさらされ、刑務所の職員による同情や保護もまったく得られませんでした。それゆえ女性たちは当初口を閉ざしました。しかし彼女たちは家族や友人に励まされ、事件を報告することに決めたのです」

https://courrier.jp/cj/297326/