9年前に“大開脚”でバンカー脱出! 片山晋呉ならではの全英対策「興味がない本を読むこと」

9年目、ミュアフィールドで行われた全英オープンの練習ラウンド、大開脚の姿勢でバンカーショットに挑戦し見事脱出(撮影:ALBA)
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ミュアフィールドは過去16回、男子のメジャー「全英オープン」を開催してきたが、女子のメジャーが行われるのは今回の「AIG女子オープン」が初めて。02年と13年にミュアフィールドで行われた全英オープンに出場し、どちらも予選通過を果たしている片山晋呉が、渡英前にやっていた全英対策が独特で面白かった。

セント・アンドリュースで行われた今年の全英オープンを制したキャメロン・スミス(オーストラリア)は、グリーンの外からパターを多用し、逆転でメジャー初勝利をつかみ獲った。ほぼ全英のリンクスコースでしか見られない、30~50ヤードをパターで寄せるアプローチを、片山も渡英前に練習していたという。

「13年は全英の前に六甲国際GCで合宿をしていて、ショートコース(パブリックコース)のほうに行って、お客さんが帰ってから、残り40ヤードくらいからパターで乗せる練習をしていましたね。パターだけでなく、ドライバー以外の全クラブで40ヤードはやりました」。実際、ミュアフィールドでの全英本番では「3回くらいそういうシチュエーションがあって、パターで1回…クリークで打ったりもした」という。その1回が「寄ったか入ったかで予選に通った」。カットラインギリギリでの決勝ラウンド進出につながったと片山は記憶している。

また、リンクスコースの特徴として小さくて深いポットバンカーがある。写真は片山の練習ラウンドのワンシーン。13年のミュアフィールドで、右足はバンカー、左足はそのアゴの上まで伸ばして、大開脚の姿勢でバンカー練習していた。「(ポットバンカー対策で)2本くらいウェッジを持っていったのは記憶にある。あと足元の変な所から練習したりとか」とうれしそうに笑う。おそらくこんな姿勢でバンカーショットを打てるのは、世界を探しても片山ぐらいだろう。

そして、やはりやっかいなのはリンクスの強い海風。半袖でプレーできるほどポカポカとした陽気かと思えば、急激に真冬のように気温が下がって、強い風や雨が選手を襲う。まさに『一日の中に四季がある』と言われる由縁だ。

「風がやっぱり重いんです。プロゴルファーは感覚で風を覚えている。『このクラブでこういう風に打ったら、このくらい飛ぶだろうな』って想像して打つわけです。でも、全英では日本でやっていた想像を超えてしまうことがある。例えば、アゲインストだったらもうちょっと強く打たなきゃとか、いままでの自分の辞書にない、初めてのことを出してこないといけない。そういうところがすごく難しいと思うんですよね」

そんなときの全英対処法が何とも片山らしい。「僕が全英に行っていたときは、いままで読んだことがないジャンルの本を読むとか、そういう発想でやっていました。極端な話、僕がまったく興味がない家具の本を読むとか、キャンプの本を見るとか。キャンプはしないけどね(笑)。まったく興味がないことを入れておくと、ゴルフで『何これ!?』って思ったときに、ちょっと脳の使い方が良くなるんです」。

さらに片山は続ける。「メジャーのときは練習の方法もまったく違う。試合にいきなり入って、『この風、この硬さ、私やったことがないんです。どうしよ、どうしよ』だと通用しない。広げておくことが大事ですよね。僕はゴルフってそうやって上手くなるだろうと思っていますから」。スイング、練習法、トレーニング、ギアと、ゴルフに良さそうなことを積極的に取り入れて、国内で5度の賞金王に輝き、09年の「マスターズ」で4位に入った男の言葉には説得力がある。

今回、日本勢は12人出場する。片山は「名前がわからないです」と言いながらも、「いまの若い女子はレベルが高いから、チャンスがあるんじゃないですかね。渋野日向子ちゃんも優勝したわけですし」と期待を寄せる。自分の経験や想像を超える場面に出くわしたとき、どんな発想で切り抜けるのか。ゴルフ発祥の地、スコットランドで選手としての真価が問われることになりそうだ。
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