「2050年日本復活」

 かつて日本に対し対米貿易赤字の解消を激しく迫り、ジャパンバッシャー(日本たたき論者)として名をはせた元米商務長官特別補佐官の著書が、米国で話題となっている。現在、自ら創立した経済戦略研究所の所長として活動しているクライド・プレストウィッツ氏の「近未来シミュレーション2050日本復活」だ。氏は、米民主党の大統領候補、ヒラリー・クリントン氏が上院議員だった時に貿易・通商アドバイザーを務めた経歴も持つ。

著書は、米紙ワシントン・ポストにも詳しく紹介されたという。米国人にとっても興味深い内容だったようだが、日本人にとっても大変刺激的な記述が次から次へと出てくる。「ボーイング社を買収した三菱重工業が開発した超音速旅客機が東京-ワシントンを2時間半で結ぶ」、「幹細胞を使った再生医療など最先端の治療法や診療サービスを求め世界中から人が訪れ、医療機器の分野でも日本のメーカーは世界一となる」、「バイオテクノロジーやナノテクノロジー、エレクトロニクス、素材、航空、化学、ソフトウェアといった分野では、医療技術や航空機技術と同じように、日本の研究者や企業が世界をリードしている」、「道路、建物、乗り物全てがスマート化され、交通事故はほぼなくなり、首都圏の建物が地震で倒壊するリスクはもはやない」、「どこでも英語が通じる完璧なバイリンガル国となっている」、「新しいトレーニング技術の開発などによりオリンピックでは日本選手団が最も多くの金メダルを獲得した」、「合計特殊出生率は平均2.3人に上昇、移民に門戸を開いたことも加わって人口も1億5,000万人に近づく」…。にわかに信じがたいような2050年の日本の姿が提示されている。

 政治、経済に関わる未来像にも、大半の日本人が目をむきそうな記述が続く。「国内総生産(GDP)は毎年、4.5%ずつ上昇を続け、対GDP比で約1%だった防衛費は、約3%に増え、核兵器や最先端のサイバー攻撃技術、大陸間弾道ミサイルを抱える世界第3の軍事大国に変貌している。東アジア、東南アジア、南アジアの多くの国々、そして欧州連合(EU)諸国や米国は、同盟する相手として魅力的な日本と全面的な安全保障条約や安全保障の協力関係を結んでいる」、「海外から日本に移住する優秀な技術者には自動的に日本国籍を与え、こうした外国人技術者の流入は、大勢の新世代の日本人起業家の努力とあいまって、日本を主な拠点とする膨大な数の新興企業やさまざまな全く新しい産業を生み出していった」…などなどだ。
 

https://spc.jst.go.jp/experiences/coverage/coverage_1614.html