ハチは目・鼻・口を狙う 虫はなぜ人を刺す? 私たちができる対策は【科学で明かす身近な謎】

虫刺されの痛みを評価する指数を開発した昆虫学者に聞いてみた

 夏になると虫が増えるのは仕方がない。世界中どこに行っても、野外活動で肌を露出していたら、虫に刺されるリスクを避けられない。
そもそも虫はなぜ人を刺すのだろうか。そして、どうしたら虫刺されを防げるのだろうか? 
過去に1000回以上も虫に刺されて、痛みの強さを評価する「シュミット刺突疼痛(とうつう)指数」を開発した
米アリゾナ大学の昆虫学者であるジャスティン・シュミット氏に聞いてみた。

なぜ刺すのか
 昆虫はむやみやたらと刺すわけではない。刺した相手に反撃されると、脚や触角など体の一部を犠牲にする恐れがあるからだ。
色鮮やかな警告色の体をもっていたり、騒々しくブンブンと大きな羽音を立てたりして、刺す前に私たちに注意を促す虫がいるのはそのためだ。

 日本で最も危険なハチの一種であるオオスズメバチも、刺激しなければ刺さないとシュミット氏はいう。それはほかのハチにもあてはまる。
特に、昆虫が餌を探しに出ている間は、人間を無視する傾向がある。なので、ハチを見かけたら静かにさっさと遠ざかろう。
スズメバチについては、強い刺激となる黒い服と強い匂いも、なるべく避けるとよい。

 1980年からオオスズメバチの研究に関わっていながら、氏自身は刺された経験はない。
日本の研究仲間のアドバイスにしたがって、オオスズメバチの長い針が届かないように、ハチ用の防護服の下に厚手のトレーナーを着ていたおかげだそうだ。

このような「刺す虫」にはなるべく近寄らないのが最善の方法だ、とシュミット氏は言う。だが、虫刺されを防ぐ対策はまだある。

 ハチは目や口、鼻を狙うことが多い。何しろ、これらは呼吸や視覚に不可欠な場所だ。
痛みは私たちが生体機能を守る動機になる。その意味では、息を止めるのも防御策のひとつになる。

 湿り気があり、化学物質を多く含んだ私たちの息のにおいを、ハチは「捕食者」のものだと認識する。
だから、息を止めてそろそろと動けば気づかれずにすむ、とシュミット氏は言う。
だが、どんなハチの巣がそばにあっても、冷静さを保って息を止められるだろうか。そう簡単にはいかないだろう。

https://news.yahoo.co.jp/articles/00a4e3c76d29ef8fd674f90ae05b3a50960f6a03