習氏の「ゼロコロナ」、何年も続くシナリオに現実味-代償は経済成長
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-08-03/RG0V7ODWX2PS01
・多くの専門家がゼロコロナが今年以降も続く可能性を警告
・香港のオミクロン株流行で生じたような高死亡率、中国指導部警戒か
(前略)
大半の世界的指導者とは異なり、習氏にとってゼロコロナ解除の政治的リスクは、潜在的な恩恵より引き続きはるかに大きい。
20年初め、湖北省武漢市で新型コロナの流行を最小限に食い止められなかったことなどは、中国共産党による統治の正当性を支える社会契約を弱めた。国民の信頼を取り戻すために習氏は民主主義諸国の指導者には利用できないような強権的手法を駆使し、ウイルスを遠ざけ、死者数を抑えた。
中国のデータは信頼性に疑問は残るが、コロナの大流行が始まって以来、中国が報告した死者数は5226人。米国では100万人を超えている。
中国政府は欧米での死者数急増を非難。ゼロコロナは共産党統治の優位性を示すために利用された。
習氏にとっての今の難題は、他国のようにウィズコロナの現実として死者数増加を受け入れてパンデミック(世界的大流行)を脱することができない点だ。高齢者のワクチン接種率も低いままで、上海では7月初めの時点でシニア層の約3割がまだ1回の接種さえ受けていない。今年に入りオミクロン株流行に見舞われた香港の経験は、その問題点を示している。高齢者施設で感染がまん延し、3月になると世界で最も高い死亡率を記録した。
ゼロコロナ堅持と引き換えに習氏が手放そうとしているのは、これまで共産党が主に関心を寄せてきた経済成長だ。
ブルームバーグ・ニュースが実施したエコノミスト調査によると、今年の中国GDP(国内総生産)は前年比4%増と、政府目標(約5.5%増)を大きく下回ると見込まれている。21年の成長率は8.1%だった。
消費者・サービス部門は2年間にわたる制約と閉鎖で打撃を受け、国内旅行は規制され、所得も落ち込んでいる。李克強首相は「深刻」な雇用状況について繰り返し警告しており、民主主義体制であれ一党独裁政権であれ市民の不安をかき立て得る状況になっている。