安倍晋三元首相の銃撃事件を契機に、白日の下にさらされた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と保守系政治家の“蜜月”。教団並みの組織票を持つ団体はほかにもあるのに、なぜ政界にこれほど食い込んでいるのか。山上徹也容疑者(41)=殺人容疑で送検=がのちに、襲撃対象を教団トップから安倍氏に切り替える要因の一つとなったイベントを通じて、その実情を探った。

 「理想家庭を完成することを約束しますか」

 「イェー(はい)」

 2019年10月6日、愛知県常滑市沖の人工島であった「孝情文化祝福フェスティバル 名古屋4万名大会」。開業したばかりの国際展示場にある六つのホールを借り切って2部構成で開かれ、約4万人の信者やゲストが集まったとされる。イベントの序盤、「既成祝福」(すでに結婚している夫婦が改めて愛を誓う行為)という教団の儀式に参加するため、36組の「代表家庭」が登壇。県議や市議とウエディングドレスを着たその妻たちだった。

 開始から約2時間が過ぎた頃。教団内部で「真(まこと)のお母様」と呼ばれる韓鶴子(ハンハクチャ)総裁が、パレードカーに乗って登場すると、会場は熱気に包まれた。日本と韓国の手旗を振って歓迎する参加者たち。2世信者がダンスや歌のパフォーマンスを披露したほか、タキシード姿の議員代表が韓総裁に贈り物を渡す場面もあった。

 山上容疑者も近くまで来ていたらしい。教団トップを襲うため火炎瓶を用意して会場に向かったが、中に入れず断念したと供述している。

https://mainichi.jp/articles/20220812/k00/00m/010/001000c