それでは、米国ではカルトにどう向き合ってきたのだろうか。桜井教授によると、市民運動が大きな役割を果たしてきたという。信教の自由が保障されている米国では、市民が自由に社会活動を行う中で自然と秩序が生まれていくとの考えがベースにある。行政は宗教団体に介入しない。自由競争が優れたものを生み出すという米国式の価値観のもとでは、伝統的な宗教も新宗教も対等な扱いが求められる。

 一方で1980年代になると、新宗教の実態が報道などで明るみに出て、入信した子供を取り返そうとする親たちによる草の根運動が盛り上がった。反カルトの動きも組織化されていった。

 信者の脱会の取り組みやカルト批判が盛んになった一方で、当のカルトから「信者をカルトから引き離して隔離し、洗脳から解放する〝強引な〟手法が取られている。人権侵害だ」などと非難され、損害賠償訴訟を起こされる事例も相次いだ。最も有力な反カルトのグループは100万ドル以上の賠償を命じられ、破産した。

 ただ、こうしたカウンターの動きにより、「アメリカの反カルト運動では脱会カウンセリングが難しくなった。多文化主義の社会なので、反カルト運動も宗教に対する不寛容として批判にさらされてしまう」と、桜井教授は指摘する。

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