横田めぐみさんは生きている。

6月27日、「世界日報」一面トップの特ダネ、「全員が平壌市内に居住」の記事が伝えた最重要のポイントだ。北朝鮮工作機関「偵察総局」の元幹部、金グクソン氏が日本人拉致被害者について初めて語ったその核心である。
小泉純一郎首相の訪朝時、北朝鮮側は横田めぐみさんや有本恵子さんら8人は全員死亡したと日本側に告げた。金氏は言う。「あれは全て嘘だ。墓地が洪水で流されたり、被害者(めぐみさん)が精神病院に入院したというのも全てデタラメ」と。
日本人拉致被害者は「全員、子供と共に平壌市内に居住」しており、「食べる物、着る物、使う物などに不自由しないよう(朝鮮労働)党が配慮し、北朝鮮では極めて上流の生活」をしている、めぐみさんについては「皆が驚くような話もある」と証言した。めぐみさんの母、早紀江さんが語る。
「こんなに長い間、これ程私たちが求めても帰さないのは、何か事情があって使われているのでしょう。それを思うとたまりません。親の勘として、(自殺などの)変なことにはなっていないと確信しています。めぐみは状況をよく見て、展開しながら考えていく人ですから、極端に走ることはないと思います」
めぐみさんら拉致被害者が平壌で暮らしているという重要情報をもたらした金グクソン氏について、救う会会長で麗澤大学客員教授の西岡力氏が近著『韓国の大統領はなぜ逮捕されるのか』(草思社)で詳述している。それによると金グクソンは偽名だが、氏が北朝鮮対南工作機関の幹部だったのは間違いない。

世界日報のスクープの意味は、なんと言っても北朝鮮工作機関の幹部だった人間が、身分を明かして、拉致被害者の無事と生存を明言したことだ。このような重要な立場にいた人物が、北朝鮮が日本に伝えたことの全てが嘘だったと、はっきり証言したのは初めてだ。そして金グクソン氏は北朝鮮の考え方を語っている。
「死亡したと言っても生きており、あるものをないというのが政治の世界だ」
家族会も救う会も、めぐみさん、有本恵子さん、増元るみ子さんら全員が生きていると信じて、全員の一括帰国を北朝鮮に要求し、政府にも求めてきた。その要求は正しいのだ。北朝鮮の言葉のひとつひとつに振り回されず、日本側が収集した情報に基づいて、全員が生きている、全員救出こそ国としての責任だと固く思い定めて、政府も国民も心をひとつにしたいと思う。

https://yoshiko-sakurai.jp/2022/07/07/9452